LION ライオン 25年目のただいまの映画専門家レビュー一覧
LION ライオン 25年目のただいま
「英国王のスピーチ」の製作陣による実話を基にしたドラマ。オーストラリアの青年サルーは、生まれたインドで5歳のときに迷子になり、家族と生き別れたまま養子に出された過去があった。彼はわずかな記憶とGoogle Earthで家を探し出そうとする。製作は、「英国王のスピーチ」のイアン・カニング。監督は、長編初監督のガース・デイヴィス。出演は、「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテル、「キャロル」のルーニー・マーラ、「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」のニコール・キッドマン、「オーストラリア」のデヴィッド・ウェンハム。トロント国際映画祭2016観客賞次点1位。第74回ゴールデン・グローブ賞4部門ノミネート。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
もう何度も書いてるように、私は「実話」という前提=担保のおかげで「ものすごく劇的な話」が成立するという逆説にはどうしても違和感があるのだが、でもまあこれは確かに「奇跡の実話」としか言いようがないよね。特に後半、映像がMV風に流れる感じがあってそこは感心しない。シーンの跳び方が感覚的過ぎるというか。主演デヴ・パテルは好演してるしルーニー・マーラは相変わらず可憐だが、見るべきはやはりニコール・キッドマンと少年サルーを演じたサニー・パワールだろう。
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映画系文筆業
奈々村久生
冒頭のシークエンスが圧巻。幼いサルーが眠っている間に列車で遠くまで運ばれ、言葉もわからず、知っている人もいない町を一人彷徨う長いシークエンスにはほとんどセリフらしいセリフがなく、背景音は鳴っているものの芝居の演出としては限りなくサイレントに近い。不安と恐怖、いたいけさと同時に発露する勇敢さを体の動きと表情だけで見せきった子役の力もすごいし、それをさせた監督もすごい。忘れた頃に明かされるタイトルの意味、その出し方がかっこよく、最後まで目が離せない。
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TVプロデューサー
山口剛
5歳の主人公がインドで兄にはぐれ路上生活の末に孤児院に行くまでの前半の描写が素晴らしい。不安に怯える少年の澄んだ瞳、雑踏を彷徨う遠景を追う映像は胸に迫る。後半は一転し20年後、富裕な豪州の一家の養子になった彼のアイデンティティ探求、実母との劇的な再会であるが、実話に基づいているということが、信じがたいこの話に強いリアリティを与える。実子を持たず貧しい国の不幸な子を養子にするというN・キッドマンのリゴリスティックな信念も説得力を持ってくる。
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