ロング・トレイル!の映画専門家レビュー一覧

ロング・トレイル!

ユーモアあふれる旅行エッセイで知られる作家ビル・ブライソンの実話を基に映画化。ロバート・レッドフォードが製作兼主演を務め、見た目も性格も正反対のシニア二人組が3500キロに及ぶ北米の自然歩道“アパラチアン・トレイル”踏破を目指す旅を綴る。共演はL.A.ギャングストーリー」のニック・ノルティ、「ウォルト・ディズニーの約束」のエマ・トンプソン。監督は「だれもがクジラを愛してる。」のケン・クワピス。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    二大名優が人生の黄昏を意識しつつ、アパラチア山脈三五〇〇㎞のトレッキングに挑む。彼らの珍道中が人生径路と重なりつつ、ある感慨に達すべきところだが、コメディータッチがもうひとつうまくいっていない。本作は映画の作り全体と対峙するものではなくて、両スターの滑稽芝居を微苦笑と共に享受すればよい作品なのかもしれない。二枚目レッドフォードは完全に受けに回り、もっぱら元悪童ノルティの不出来に対して苛立ったり赦したりする。この諦念こそ人生の粋ということか。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    今号の課題作品は辺地を舞台にした作品ばかりだが、これがいちばん気楽に見られた。なにせレッドフォード八〇歳、ノルティ七五歳だからあまり無理はできぬ。アパラチア・トレイルの道中行も高尾山ハイキングの如し。元アル中のノルティがいつ酒に手を出すかのサスペンス、熊に襲われてのスリル、人妻に手を出しての騒動と、挿話は数々あれど、超おしゃべりの女性ハイカーがクスクス笑える程度のゆるい展開。体力の限界なのでここらで失礼の幕切れまで、こちらもノンビリした気分に。

  • 映画ライター

    中西愛子

    こんなに普通っぽい老人をチャーミングに、楽しんで演じているレッドフォードは珍しいのではないか。ふと思い立って大自然の長距離徒歩の旅に出る男。老いに触れる自虐ネタもなんのその、知的な品性は健在でなかなか艶やか。同伴する悪友を演じるニック・ノルティは、登場時、大丈夫かと思うほどの老体だけど、さすが味のある演技を貫徹。ふたりのコンビネーションがとてもいい。セリフも粋で奥深い。地味な作品だが、ゆったりした気持ちで人生を考えさせてくれる大人のコメディーだ。

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