コロニアの映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
奇しくもパトリシオ・グスマン監督「チリの闘い」と同時期に日本公開されることになった、1973年9月11日の軍事クーデター後のチリを舞台とするサスペンス。監督はドイツ人。元ナチスのパウル・シェーファーがチリに設立した実在の宗教組織コロニア・ディグニダ(=尊厳のコロニー)の施設に幽閉された恋人を救出するべく潜入したエマ・ワトソンのけなげな勇気が麗しいが、その他は何もかもグロテスク。作品の焦点は、コロニア・ディグニダとシェーファーの異常性の再現にある。
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映画系文筆業
奈々村久生
エマ・ワトソンはほぼほぼポストナタリーポートマンの地位を確立したと思う。子役からのキャリアや学業と女優業の両立といった外的要素だけでなく、少々過度な正義感と女性特有の潔癖さをうかがわせるルックスや生き方のスタンスも通じるものが。そんなエマが本作に惹かれるのは必至で、全寮制の女子校を思わせる施設での居住空間や信仰との結びつきなどその手のフェティシズムをくすぐる効果も満載。名目は恋人の救済だが自らの正義がそれを上回る女性版ジャスティス映画だ。
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TVプロデューサー
山口剛
70年代のチリの軍事独裁の恐怖政治が背景になっている。殺害された市民は3万、投獄された者は数十万とも言われる。「ミッシング」「サンチャゴに雨が降る」などはこの不正義に対する怒りが正面から描かれていたが、本作はオカルト教の修道院を装う拷問施設からの脱出劇が主となり、撮影は施設内部に限られるので、現実感がなくなっている。実話とはいえ現実の政治が引きおこす恐怖をオカルトホラーにすり替える如き制作意図は首肯しがたい。D・ブリュールの熱演が痛々しい。
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