母の残像の映画専門家レビュー一覧
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映像演出、映画評論
荻野洋一
戦場写真で数々の賞を受賞した女性写真家(I・ユペール)が交通事故死して3年。死因の疑惑をめぐり、夫と2人の息子が困惑と動揺を募らせていく。子が親より早死にするケースを除けば、家族の死を経験しない人間は珍しいと思うが、それはなんとも対象化できかねる経験である。死を「境」に、人は死せる家人と別の関係性を開始することになる。その奇妙な居心地のありかを、本作は繊細きわまりないカメラで収めていく。残った者がいかに生きていくかについての、万感迫るレッスンだ。
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脚本家
北里宇一郎
十五歳の男子。片思いの女子がパーティで悪酔いしたので送って行く。途中で女子が尿意を催す。車の陰で放出。待っている男子。その足元を液体が流れ、男子、じっと見つめる――てないい場面はあるけど。戦場カメラウーマンの母親がいて、事故か自殺か分からない死を遂げる。夫と二人の息子は動揺。その心の動きが描かれていくわけだが、それぞれの母に対する(生前の)想いが不明瞭な気がして。だから父子が失ったもの、求めるものが見えない。沁みそうで沁みない、じれったい映画。
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映画ライター
中西愛子
監督ヨアキム・トリアーは、ラース・フォン・トリアーの甥。確かに何となく血筋の才気は感じるけど、才気もどきなんじゃ……。これだけいい俳優たちを揃え、それぞれに面白い芝居をさせているのに、俳優陣と物語の化学反応をちっとも感じない。監督は、バーンやアイゼンバーグのミーハー的なファンなのだろう(私もそうです)。その思い入れは伝わっても、これは家族の物語として成立しているのか? 印象的なシーンも、結局、思わせぶりな断片に処理されてしまって、消化不良。
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