聖杯たちの騎士の映画専門家レビュー一覧
聖杯たちの騎士
「ツリー・オブ・ライフ」など詩的な映像を紡いできたテレンス・マリック監督のもと、名だたる俳優が集結したドラマ。ハリウッドで成功をおさめながら虚無感を抱え続ける脚本家リック。巡り合った6人の女たちとの愛の記憶をたどり、過去と向き合っていく。脚本家を「ダークナイト」シリーズのクリスチャン・ベイルが、彼を取り巻く女たちを「キャロル」のケイト・ブランシェット、「ブラック・スワン」のナタリー・ポートマンらが演じる。また、「ゼロ・グラビティ」「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」「レヴェナント: 蘇えりし者」で3年連続アカデミー賞を獲得したエマニュエル・ルベツキが撮影監督として参加。テレンス・マリック監督とは4度目のタッグとなる。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
とにかくこれだけのスター俳優を揃えて完全な個人映画を拵えられるテレンス・マリックの謎の力に畏れ入る。「トゥ・ザ・ワンダー」「ツリー・オブ・ライフ」同様、いかにも深淵な哲学的思弁を弄しているようでいて、実は俗っぽさの極みであるという点をどう受け取るかで評価は真っ二つに分かれるだろう。そしてマトモに考えれば否定が正解である。だが僕は嫌いになれないのだ。どうしてこんな作品を撮りたいのか、どうしてこうなってしまうのかに興味がある。答えはないんだろうが。
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映画系文筆業
奈々村久生
映画が進むにつれてだんだん焦ってきたほど、言葉も映像も耳や目を通り過ぎていってしまう。内省的で抽象的なフレーズをひたすら独白するポエティックなセリフ群はまったく心に届いてこないし、主人公の心象風景にシンクロするとおぼしき光景をとらえたルベツキの壮大な映像を快楽として享受できるほどの成熟したセンスも持ち合わせていない。映画との出会いには年齢、場所、経験、タイミングなどが大きく作用するという当たり前のことを痛感するきっかけになった。
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TVプロデューサー
山口剛
クリスチャン・ベイル、C・ブランシェット、N・ポートマンなどハリウッドスターが勢揃いしているが、エンターテインメントではない。テレンス・マリックが自作の詩にキャメラのエマニュエル・ルベツキと共に映像を重ねていった映像詩で、従来なら前衛映画、実験映画と言われたような作品だ。映像は比類なく美しいが、売れっ子脚本家の目に映るハリウッドは荒涼たる「荒地」だ。「甘い生活」の現代版と言ってもいい。たまには詩集を手にするようにこんな映画を観るのも新鮮だ。
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