花戦さの映画専門家レビュー一覧

花戦さ

戦国時代の華道家元・初代池坊専好のいけばな『前田邸の大砂物』の伝説に着想を得た時代小説を映画化。無二の友・千利休と互いに切磋琢磨しあう専好。しかし時の権力者・秀吉は利休や罪のない町衆の命を奪い、見かねた専好は彼にしかできない戦さを仕かける。監督は「起終点駅 ターミナル」の篠原哲雄。花をもって人々の心を救う池坊専好を映画界でも活躍する能楽師の二世野村萬斎が、権力を握り驕る豊臣秀吉を歌舞伎役者の四代目市川猿之助が演じる。池坊華道会が戦国~安土桃山時代のいけばな作品を復元・製作。また、表千家不審菴、裏千家今日庵、武者小路千家官休庵の三千家が協力体制をとった。
  • 評論家

    上野昻志

    飾られる花が美しいので、★ひとつおまけしたが、お話に従えば、野村萬斎と佐藤浩市と市川猿之助の演技合戦を見るのが本筋か。池坊専好を明るいキャラに設定したためか、萬斎が表情に変化をつけすぎるのが、ちょっと気になったが、声も表情も抑え気味の利休=浩市と向き合うと、バランスが取れるし、同じことは、利休と、天下人となった秀吉=猿之助の怒りを含んだ顔や声との間にもいえる。その意味で、事件も含め三者の要は陰の利休にあったことになるが、三國=利休とどっち?

  • 映画評論家

    上島春彦

    茶室における、明るい方を背にした千利休の暗い表情を捉えた横顔撮影の見事さにシビれる。この作品はある日織田信長の下にいやいや集結する羽目になった人々の、それから数年後の変転を描く群像劇。そこに「お花」の池坊家がどう関わったか。ちょっと頭が悪いので自分はリーダーの器じゃない、と思い込んでいる主人公専好の設定が面白い。そこを専武がサポートするわけで、こちらも儲け役である。暴君豊臣秀吉に対する利休と専好それぞれの闘い。美少女絵師森川葵も効いてますよ。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    大仰な演技と表情で劇を活性化させようとする萬斎を活かしきれていない。萬屋〈柳生〉錦之助と同じく一人だけ浮いているが、この芝居を受けられるのが猿之助と蔵之介らに限定されるのが問題。せっかくクライマックスが前田邸大広間という舞台仕立てになっているのに萬斎の大芝居が不足。主人公の記憶障害が中途半端な扱いで、これによって起きる笑いも泣きも徹しきれず。世情とは無縁に生きた天真爛漫な男が責任ある立場に立たされる苦痛と権力者からの抑圧だけで充分な話なのだが。

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