健さんの映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
あれは、一九六七、八年頃だったと思うが、やくざ映画の流行を問題視するテレビの報道番組で、高倉健が、非難がましい質問をぶつける司会者に、生真面目に応じ(弁明)ていた姿を思い出す。当時、世間一般の「良識」は、やくざ映画に否定的だったが、そんななかで、高倉健はひときわ輝いていたのだ。わたしが、没後の健さん賞賛の大合唱に違和感を覚えたのは、そのような歴史が忘却されていたからだ。それに似た印象を、スクリーンに躍動する健さんの姿を欠いた本作にも感じる。
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映画評論家
上島春彦
健さんは日本国民のみならずアジア人からハリウッド人種にまで愛されたヒトであったと。それは分かった。だが、ファンから評論家、監督に至るまで全コメンテーターからこんなに絶賛されちゃ、かえって故人が可哀想。むしろ実感から出ている分だけ東映系の役者さんの発言が辛口でも面白い。それと長年の付き人一家との友情には心にしみいるものがあったな。その分スコセッシ監督の無駄話にはイライラさせられる。どうせなら澤島忠監督の話をもっと聞きたかった、今からでも是非。
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映画評論家
モルモット吉田
スコセッシらがカメラに向かって健さんと呼びかける甘ったるさには参ったが海外在住監督ゆえか、聖人化は抑制気味。海外では知名度が高くない実情を踏まえた作りになっているのがいい。健さんの懐疑心と信仰心に、東映離脱と晩年の作品選択への疑問もある程度想像がついてくる。米版「ゴジラ」は兎も角、「ミシマ」の従来と異なる降板理由が明かされる証言も興味深い。薬師丸ひろ子に振り回されるおじさん役での再共演企画を断る健さんに、同じ歌を唄い続けると決めた俳優を思う。
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