泣き虫ピエロの結婚式の映画専門家レビュー一覧
泣き虫ピエロの結婚式
第4回日本感動大賞を受賞したノンフィクションを基にしたラブストーリー。笑顔を忘れた透析患者の陽介に恋したピエロの見習い・佳奈美は、自分の運命を嘆く彼のためにどんな時も笑顔でいようと決心する。やがて二人は結婚を約束するが、陽介に死が迫っていた。監督は「すーちゃん まいちゃん さわ子さんの御法川修。皆を笑顔にすることを夢見てピエロを目指す佳奈美を「誰も守ってくれない」の志田未来が、腎臓に病を抱え笑顔を忘れた陽介を「シマウマ」の竜星涼が演じる。
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映画評論家
北川れい子
原作者であるモデルの女性のことはまったく知らないが、志田未来が演じるヒロインの押しつけがましくも騒々しいキャラクターは、お節介女のサンプルみたい。それで純愛と言われても、出そうもない涙が更に奥に引っ込んだり。ま、素直に観れば、難病で半ば人生を閉ざしてしまっている若い男を献身的に支えた主人公の美談であることは間違いないのだろうが、逆にヒロインの強引さに男が絡め取られたような印象も。ピエロは一種の自虐キャラ。独りよがりの笑顔と善意にウンザリする。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
前回はこのコーナーを四年やっていることの副作用で、難病ものへの飽食で毒を吐いたが、本作で描かれる腎臓の病で透析が必要という状況は伯父三人(上の二人は既に亡い)と母親が糖尿である家系の自分にも高い確率で訪れる事態なので身につまされた。以後気をつけたい。粗さや型通りのところがあるが、諦念からの愛想づかしの場面は強かった。他にも婚姻届に署名しようとして手の痺れを自覚、車のなかで隠れて泣く、ピエロの付け鼻など、具体によって語る場面が良かった。
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映画評論家
松崎健夫
信号が青から赤に変わるファーストカット。それは横断歩道を渡る側にとって赤から青になるという場面になっている。またバス停には“赤十字病院”と記されているように、映画冒頭でその後の展開に対する予兆が示されている。それゆえ、危険を促す〈赤〉を、服・靴・帽子・お手玉・風船・ピエロの鼻、そして〈血〉等によって、劇中へ点在させていることも窺える。物語はその予兆に沿っているだけなのだが、本作にとって重要なのは「見方によって見え方が異なる」という点にあるのだ。
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