ゆずの葉ゆれての映画専門家レビュー一覧

ゆずの葉ゆれて

松原智恵子の芸歴55周年を記念して製作されたヒューマンドラマ。隣家に住むジイちゃんが亡くなって悲しむ小学4年生の武。そこに見知らぬ少年ヒサオが現れ、宝探しに誘われた武は柚子の木の下から掘り出した古い煙草の缶をユウコという女性に渡すよう頼まれる。児童文学作家の佐々木ひとみによる椋鳩十児童文学賞受賞作『ぼくとあいつのラストラン』を原作に、本作が劇場用長編映画デビューとなる神園浩司監督が映画化。共演は「0.5ミリ」の津川雅彦、本作が映画初出演の山時聡真、「陰獣」の西村和彦、「おしん」の小林綾子、「飛べ!ダコタ」の芳本美代子、「陽光桜 YOKO THE CHERRY BLOSSOM」の真由子。
  • 評論家

    上野昻志

    厚化粧で固めた「後妻業の女」を見たあとでは、こちらの薄化粧にホッとするが、それは同時に、物語の焦点がいまひとつ定まらない弱さにも通じる。走るのが好きな少年が、祖父の過去を知って奮起するという話と、松原智恵子演じるバアちゃんと津川雅彦のジイちゃんの夫婦愛の物語とが、根っ子のところできちんと結び合わされていないので、エピソードを並べただけにしか見えないのだ。松原智恵子の芸歴55年は確かに目出度いが、彼女の語りに頼るだけでは、なんとも弱すぎる。

  • 映画評論家

    上島春彦

    ご当地映画として過不足ないのだが、八方美人。次々と現れる登場人物に映画があっぷあっぷしている。諸事情もあろうが半分に削れるね。これは少年がただ走る映画にするべき。空撮もそっち方面にがんがん効かせてくれてたらずっと楽しかっただろうに。彼に走り方の手ほどきをする謎の少年、実は、という構成なのに消化不良。だが、良いのは少年が終始うじうじしていることで、そのためお姉さんや同級生少女のしっかりぶりが光る。男はうじうじ生きてこそ吉、という教訓であろうか。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    ロケ地の全面協力を取り付けて無数に製作されるご当地映画は玉石混交もいいところだが、本作は原作がしっかりしているせいもあるだろうが破綻のない丁寧な作り。走りが得意だが1位になれない少年が主人公ながら、首位至上主義や2位じゃダメなんですか的な話にならないのがいい。今回の4本中3本に出演の津川が引っ張り、松原が締めるベテランの存在感が往年の児童映画を思わせる小品を華やいだものにさせる。それを受ける演出が奇をてらわず、クサいものにしなかったのも好感。

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