リトル・ボーイ 小さなボクと戦争の映画専門家レビュー一覧

リトル・ボーイ 小さなボクと戦争

第二次世界大戦下のアメリカを舞台に、家族愛と成長を活写した人間ドラマ。背が低くからかわれていた8歳の少年ペッパーは、心の支えだった父を戦地から呼び戻したい一心で司祭に相談。差別を受ける日本人と交流するなど、弱い自分に打ち勝つ努力をしていく。監督は、「Bella」(未)で2006年トロント国際映画祭で最高賞に当たる観客賞を獲得したアレハンドロ・モンテヴェルデ。出演は「博士と彼女のセオリー」のエミリー・ワトソン、「グローリー/明日への行進」のトム・ウィルキンソン、「HACHI 約束の犬」のケイリー=ヒロユキ・タガワほか。劇場公開に先立ち、第1回広島国際映画祭でワールドプレミア上映された(上映日2014年11月16日)。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    ノーマン・ロックウェルのイラストが動いているかのような画面にニコニコしていると、「古きよきアメリカ」の欺瞞を暴くかのように、憎悪をめぐる重い重い話が始まる。「リトルボーイ」が太平洋戦争を終わらせるって、どんな悪趣味な冗談かと眉をひそめそうになるが、物事の一面的描写をできるだけ回避しようとするこの映画は、このくだりにも見事な決着をつける。「辛子の粒ほどの信仰心」を形象化したような小柄な少年の夢と、現実とのバランスもかなりいい。注目すべき監督の登場。

  • 映画監督

    内藤誠

    第二次大戦中のカリフォルニア州の小さな漁村の物語をメキシコの地で撮影しているのに、オールド・アメリカ感に溢れている。監督自身はノーマン・ロックェルの絵にヒントを得たと言っている。大声を張り上げて念力を使う主人公のリトル・ボーイにしたって、「ブリキの太鼓」の引用に見える。ほかにもベン・イーグルのマジック・ショーなど、作者たちの映画的教養が楽しめる。日本人ハシモトを演じるケイリー=ヒロユキ・タガワがしぶくて泣かせる。トランプ大統領候補に見せたい。

  • ライター

    平田裕介

    敵対する相手への憎悪や破壊が人々の原動力、至福、希望になってしまう、戦争の恐ろしさやおぞましさが伝わってはくるのだが、絵面もキャラ造形もノリも牧歌的なもので統一されているので、なんかこうガツンとこない。ここで、フィリピンの戦地と広島の地獄それぞれをリアルかつ壮絶に描いてでもくれれば、少年のいるアメリカンを極めた風光明媚な架空の町との落差と相まってズドンとやられてしまうのだが。とりあえず、少年を演じたジェイコブ・サルヴァーティは可愛いくて◎。

1 - 3件表示/全3件