ケンとカズの映画専門家レビュー一覧

ケンとカズ

第28回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞した犯罪ドラマ。自動車修理工場で働きながら覚醒剤を売りさばく二人の男が、家庭の事情を抱えながらも裏社会で生きていく姿を活写する。監督・脚本・編集は、本作が長編デビューとなる小路紘史。出演は『35歳の童貞男』のカトウシンスケ、「はやぶさ 遥かなる帰還」の毎熊克哉、「ライチ☆光クラブ」の藤原季節、「蜃気楼の舟」の高野春樹。
  • 映画評論家

    北川れい子

    ケンとカズを演じる2人の俳優のカメラに動じない演技と表情が素晴しい。遊ぶ金ほしさではなく、それぞれのしがらみの中でまとまった金がほしい2人。ロクでもない闇仕事は、自ら蒔いた種でニッチもサッチもいかなくなるが、2人の息遣いとイラ立ちが画面からストレートに伝わってきて、その暴力も悲鳴に近い。2人をここまでみごとに描き出した小路監督の手腕に拍手を送りたいが、遅まきながらYouTubeで、本作のもとになった11年制作の短篇を観て、ワッ、短篇のほうがもっと凄いと。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    低予算のなかでのツボを押さえたエンタメぶり。暴力と、いま現在確実に存在しそうなのにメジャーな映画にあまり出てこない人々を描いたことで、時期的に「ディストラクション・ベイビーズ」「孤高の遠吠」と比較されることも多いだろうが、そう並べた場合に最も意識的に構成して娯楽性を狙っているのは本作だろう。ある種の韓国映画ではちゃんと出来ていて、多くの日本映画に出来ていなかったことが出来ている。観るべし。そして本作の監督、スタッフ、キャストに更なる機会を。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    ケンとカズの暮らす〈世界〉を構築させるためか、本作には余計な人物がフレーム内に映り込まない。映り込まないから、その〈世界〉が閉じているように感じる。それは〈半径5メートルの世界〉という自主映画への揶揄とは異なる。閉じているからこそ閉塞感があり、より広がりのある〈世界〉に飛び出すための動機となる。多用されるクロースアップも、その効果を生むためだ。そしてカトウシンスケと毎熊克哉の面構えは、映画に人気スターが必要ないのではないか? とも思わせるに至る。

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