奇跡のピアノの映画専門家レビュー一覧

奇跡のピアノ

    テレビ番組で取り上げられるなど韓国で天才ピアノ少女として注目された視覚障害を持つ少女とその家族を追ったドキュメンタリー。夢を叶えるためにコンクールに出場するイェウンの挑戦とは……。特集『韓国映画セレクション2016 AUTUMN』の一作。音楽番組でイェウンと共演したことのある音楽グループ『JYJ』のパク・ユチョンがナレーションを務める。
    • 映像演出、映画評論

      荻野洋一

      主人公の盲目少女は、技術を序列化するコンクールへの出場よりも、極上の音感を用いた創造の才に長けているようだ。若き男性教師との初対面の日、彼の先導に乗り、彼女が即興によってその想像力を鍵盤に叩きつける瞬間の、無二と言える感動は、ドキュメンタリーでしか描き得ない。先生と少女の二台のピアノが四手によって豊饒なる対話を実現させている。「忘れられた皇軍」の大島?は“目玉のない眼から涙だけはこぼれる”と述べたが、目玉のない彼女には、驚くべき耳と手がある。

    • 脚本家

      北里宇一郎

      眼の不自由な少女が天才的にピアノを弾く。やがて有名になり一流のミュージシャンとして成功――なんてドキュメンタリーじゃないのがいい。からだのハンディキャップを、音楽で乗り越えさせようとする周囲の大人たちの思惑があたたかくて。ギリギリ涙で濡らさない、この淡々の演出。母親だと思っていた女性が実は、という事情を、波紋が広がるように徐々に観客に打ち明けて行く構成も巧く。さらりとしたナレーションも効いている。ラスト、少女の独り歩きの画面だったらなあ、とも。

    • 映画ライター

      中西愛子

      生まれつき目が不自由な少女イェウン。3歳で誰に教わるでもなくピアノを弾き始め、5歳の時にテレビに出演して称賛される。そんな彼女と家族のその後を追ったドキュメンタリー。詳しい資料がないのだが、恐らく、数年間というかなりの歳月をかけて撮影しているだろう。ピアノを中心に添えた、イェウンの心と身体の成長が克明にとらえられている。そして、彼女を見守り続ける母もその過程で変化しているように見える。勇敢な格闘の記録。愛を糧に懸命に生きる少女の姿に圧倒された。

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