惑う After the Rainの映画専門家レビュー一覧

惑う After the Rain

地方創生を目指す静岡県三島市民有志によるみしまびとプロジェクト製作の家族ドラマ。挙式を翌日に控えた長女・いずみに、亡き父の夢を初めて明かす母・イト。父の死、貧しい暮らし、妹の妊娠など様々なことを乗り越えてきた家族の思い出と愛が浮かび上がる。監督は「らくだ銀座」や「ふるさとがえり」など地域に根付いた映画を手がけてきた林弘樹。父に代わり一家を背負おうとしてきた長女を「バウンス ko GALS」の佐藤仁美が、シングルマザーの次女を「喰女-クイメ-」の中西美帆が、夫の死後女手一つで子どもたちを育てた母を「かぞくのくに」の宮崎美子が演じる。2016年11月19日より静岡先行公開。
  • 映画評論家

    北川れい子

    いささかよそよそしい「惑う」というタイトルに“戸惑う”。大河ドラマを数分でまとめたような父親の半生と、“幸せな家庭というものを知らない”という、父の心の声にも“戸惑い”を覚える。父は恩師から塾を引き継ぎ、やがて家族を持つのだが、物語のメインは父親が急逝したあとの母親と2人の娘の話なのに、何やらグズグズと歯切れがワルく、その演出にも“戸惑う”。終盤にこの家族の秘密が明かされるが、これがまた、新派芝居ふうな美談。家とか昭和とかもいまいちおざなり。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    映画全体が時間を行き来するような構成で、そのことで主人公ら家族の秘密を小出しにしてゆくというのは、根本的にそういう話であり、そういう語り方以外に仕方がないからのような気もするが、もっと現在形の、いまこの事態が誰の予測もつかず起きている、それが実況され目撃されているという錯覚を抱かせるようなありかたのほうがやはり映画として強いのではないかと思い、微妙に芯を外し続けてる感じのまま観た。俳優個々の演技は変ではなかった。作り手の作為が見えすぎか。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    映画における〈雨〉は、往々にして“悲しみ”を表すことが多い。だが本作では、登場人物其々の“ある決意”を導く場面で〈雨〉が降っている。川や水路で横移動のショットがあるように、〈水〉は行動原理を象徴するものであることが窺える。デジタル撮影が主流となる中、スーパー16で撮影されているが、地方で資金調達する作品の方がフィルム撮影に拘れるという逆転現象も一興。因みに本作の中西美帆も、登場人物の背景を感じさせる演技アプローチでキャラクターを魅力的にしている。

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