ハルをさがしての映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
3・11を機に福島を離れた人たちは、生活上の様々な問題だけでなく、残っている人たちに対して、どこかで後ろめたい想いを抱えているのではないか? だが、これまで3・11以後の福島に関わる映画では、それを描いたものはなかった。その点で、本作が初めて主題にしたといっていいが、それを頼りない男子三人組を引き連れた少女の旅として、急がず、浮かび上がらせたのがいい。愛犬への想いと共に親友を裏切ったという想いを抱える彼女に較べ、男子どもが幼すぎる感はあるが。
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映画評論家
上島春彦
男の子の純情は下ごころとセットになっていて可愛い。そういう自覚はないのだろうが。しかしこの物語は設定がずさん。迷い犬を探しに故郷福島に旅立つ少女と、それについていく少年三人。やがてカメラマンになるであろう少年以外はキャラが立ってない。だったら二人旅でよかった。それならもっとはらはらしたと思うのだ。主人公はこの少年だが、劇的な葛藤は全て彼が恋する少女の方にあるため、どうにも落ち着かない。福島の田園風景と川村ゆきえ似の美少女のルックスでもった映画。
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映画評論家
モルモット吉田
福島を題材にする是非を監督がプレスで断っていたがゴジラで露骨に暗喩する時代に気後れする必要なし。ジュヴナイルとしては佐藤菜月が魅力的だし映像も良い。だが、福島に舞台を持っていくことに気を取られ、そこへ向かわせる犬やカメラといった彼らにとってのお宝の扱いが難で、犬に対する佐藤の思いも伝わらず。数日の汗にまみれた旅を、顔を黒く汚す程度で汗臭さも出さなければ、それを気にする風もないのは手抜きと言われても仕方ない。ヒロインの身勝手さばかりが目につく。
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