過激派オペラの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
アングラ演劇が盛んだった70年代前後は、時代を挑発する活動や各劇団同士のぶつかり合いだけではなく、劇団内での色恋沙汰もハンパではなかったと聞くが、女だけの劇団のバックステージふうのこの作品、その色恋沙汰をメインにしていて、描写がまた、生々しく大胆。何やら自らの原作を映画化した江本純子は、自分好みの恋人を探すために劇団を立ち上げ、オーディションをしたのではと勘繰りたくなるほど。そういった女同士の関係は面白いが、劇中の公演まで70年代ふうとはガクッ。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
面白かった。裸体に威力があった。意外とミニマルな関係性の話なので題名が中身と合っていない気もしたが。本作が描く世界には男もペニスも存在せず必要とされもしない。私は男としてそのことを心地よく思った。そしてこの女性たちの関わり合いを、世に多く見られる、男性が支配的に存在する現場のカリカチュアとしては見たくないとも。集団での表現をやっていて生じるあの厭な感じへの解答すら求めて。それは果たされなかったが。ラストはやや甘い。だが嫌いにはなれない青春映画。
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映画評論家
松崎健夫
早織演じるナオコが稽古中に劇団員を怒鳴りつける場面。いっけんするとナオコが劇団員を演出しているように見えるのだが、実際に現場を演出しているのは、その向こう側にいる監督の江本純子なのである。当然の如くナオコを演じる早織には、彼女を演出する江本純子の存在がある。興味深いのは、観客が「ナオコ=早織=江本純子」という公式を導きながら観てしまう“入れ子の構造”が生まれている点。演じる役により全く異なる印象を与える早織には、カメレオン女優の資質を見出せる。
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