MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間の映画専門家レビュー一覧

MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間

ジャズの帝王と称されるトランぺッター、マイルス・デイヴィスの姿を俳優ドン・チードルがメガホンを取り映画化。1970年代後半。活動休止しているマイルスは、押しかけてきた音楽レポーターのデイヴとともに、盗まれた最新曲のテープを取り戻そうとする。ドン・チードルは監督に加え、主演・共同脚本・制作も担い、マイルスの苦悩や復活までの道を描く。彼に取材しようと同行する記者を「ゴーストライター」のユアン・マクレガーが演じる。また、マイルスとの共演経験のあるハービー・ハンコックやウェイン・ショーター、ジャズシーンで活躍するエスペランサ・スポルディングらがライブシーンに登場。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    背景に流れるマイルスの演奏に、ふさわしくあろうとするかのような文体。過去と現在とが自在に交錯し、やがてすべてが華麗にクライマックスへと流れこむ形式には、いまどき「オール・ザット・ジャズ」かよといぶかる声もあるだろうし、「ストーンウォール」同様こちらも完全にフィクションなのだけれど、普通に伝記映画を撮ってもマイルスという人物は表現できないと言えば、批判への答えとして充分だろう。サングラスを外すとドン・チードルにしか見えないことについてはスルーが吉。

  • 映画監督

    内藤誠

    邦題のせいでジャズ好きはマイルスの空白の5年間の謎が知りたくて見る。回想シーンに警官ともめて殴打される有名な事件も出てきて期待がたかまる。だがやがてマイルス秘蔵のテープをめぐり、銃撃戦やカー・アクションが始まると、?然。ドン・チードル主演の「ホテル・ルワンダ」が民族紛争の原因究明よりもアクションに重点を置いたのを連想する。チードルが自分で監督してマイルスを演じたかった情熱は伝わり、偏屈な風貌もよく演じられていたので、最後の演奏には感動した。

  • ライター

    平田裕介

    マイルス版「ヤア!ブロード・ストリート」といったところだが、殺伐としていてコカインまみれなのが彼らしい。さすがに銃をぶっ放し、カー・チェイスまでやらかすのはやりすぎじゃないかなと思うが、カオティックに鳴り響く“電化マイルス”期の楽曲、エレベーターの壁を押して70年代の高層ビルから50年代のクラブへと移動するといったジャンキー視点に満ちた場面転換が効いてきて、気にならなくなる。マイルスに扮したドン・チードルは、髪型で少し冒険してみた彼にしか見えず。

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