小さな園の大きな奇跡の映画専門家レビュー一覧

小さな園の大きな奇跡

2015年香港映画興収ランキング1位、アジアフォーカス・福岡国際映画祭2015観客賞受賞の実話に基づくヒューマンドラマ。有名幼稚園の園長を辞めたルイは、夫ドンの反対を押し切り、資金不足で閉園の迫る幼稚園の園児たちを救うため、園長に就任する。出演は、「私たちが飛べる日」のミリアム・ヨン、「レクイエム 最後の銃弾」のルイス・クー。監督・脚本は、「6AM」のエイドリアン・クワン。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    展開は全部予想がつくし、伴奏音楽の使い方もあまりに型どおりなのだが、そういうことを言うのが野暮なように思えてくる映画。幼稚園存続への努力以上に、貧困のなかですさんでいた大人たちが生き生きとした表情を取り戻していく過程に感動させられる。穏やかなルイス・クーも味わい深く、美術も撮影も丁寧。しかしラストのあれはどうしてテロップで処理してしまったんだろう。あと、実話がそうだったからなんだろうとは思うけど、やはり「なぜギロチンなのか」と思わずにいられず。

  • 映画監督

    内藤誠

    観光ではなじみのない現在の香港で生きる人たちがリアルに描かれているのが新鮮だった。幼稚園の園長を演じるミリアム・ヨンと彼女を取り巻く子どもたちの魅力による作品だが、冒頭、ヨンが勤める有名幼稚園へ、若いエリート層の夫婦が子供のことで文句をつけにくる。その不快さの演出が巧妙だ。我慢できないヨンは廃園寸前の幼稚園にみずから志願して勤務する。実話に基づくというが、地方との貧富の格差はすさまじい。夫ルイス・クーの理解も得て映画はハッピーに終わるけれども。

  • ライター

    平田裕介

    経済状況や親の不和を筆頭に、園児たちを取り巻く相当にヘヴィそうな問題が、ヒロインの家庭訪問一発でほぼ解消してしまう。また、園児もそうした環境に置かれているにもかかわらず非常に良い子で、あまり大変なムードを感じられず。ただし、そんな彼女の奮闘と交互にギロチン台の実物大模型作成に燃える夫ルイス・クーの姿を映すという、どうかしているセンスは買いたいところ。入院した彼女を励まそうと、夫が完成させたギロチン台を見せに持ってくるシーンは本当にどうかしている。

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