胸騒ぎのシチリアの映画専門家レビュー一覧

胸騒ぎのシチリア

1969年公開の「太陽が知っている」を原案に「ミラノ、愛に生きる」のルカ・グァダニーノ監督が映画化。痛めた声帯を癒す為、シチリアの孤島で恋人と優雅な時間を過ごすロック歌手のマリアン。そこへ元恋人の音楽プロデューサー、ハリーが娘を連れてやって来る。出演は「グランド・ブダペスト・ホテル」のレイフ・ファインズ、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のダコタ・ジョンソン、「リリーのすべて」のマティアス・スーナールツ、「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」のティルダ・スウィントン。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    いきなりフルヌードのティルダ・スウィントン。やたらハイテンションのレイフ・ファインズ。アラン・ドロン主演「太陽が知っている」のリメイクだが、世界的ロック・シンガーのヒロインが声帯手術後で殆ど声が出ないという新たな設定がアクセントを与えている。ストーリーは基本的にオリジナルをなぞっているのだが、登場人物の重要度のバランスを変更したのが成功しているとは思えない。個人的にはダコタ・ジョンソンの魅力がいまひとつ。ローリング・ストーンズ愛の映画でもある。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    序盤のほうで休暇中の男女の時間に割って入るようにスマートフォンの着信音が鳴るところがある。一瞬自分の電源を切り忘れたかと焦るほどに、今の社会では誰もが一度は耳にしたことがあるだろうお馴染みの音が、劇中ではとんでもない異物であるような違和感を覚える。この使い方が上手い。太陽が明るく美しく輝くほど不穏な空気はじわじわと広がり、プールでの肉弾戦は音楽のつけ方を含めてかなりの名シーン。ダコタ・ジョンソンのファム・ファタールぶりにも痺れる。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    「太陽が知っている」のリメイクだが新しい意匠をこらし斬新な作品になっている。ティルダ・スウィントンは喉の手術直後で声のでないロックスター、お忍びで若い恋人とヴァカンスを楽しんでいるところへ、元彼のカリスマ音楽プロデューサーが現われる。レイフ・ファインズはこのエネルギーの塊のような饒舌な快楽主義者を怪演に近い迫力で演じ場面をさらう。二人の競演は見ものだ。奇妙な再会が次第に不穏な雰囲気になり不条理的な殺人に至る上出来な犯罪メロドラマだ。

1 - 3件表示/全3件