ストーンウォールの映画専門家レビュー一覧
ストーンウォール
ローランド・エメリッヒ監督が1969年に起きた実際の事件“ストーンウォ-ルの反乱”を基に映画化。インディアナ州に暮らすダニーはゲイであることを知られ、故郷を追われるようにニューヨークに辿り着く。彼を迎え入れたのは、美貌を武器に体を売るレイだった。出演は「戦火の馬」のジェレミー・アーヴァイン、「シャドウハンター」のジョナサン・リース・マイヤーズ、「LOVE 3D」のカール・グルスマン、「神様なんかくそくらえ」のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、「WISH I WAS HERE僕らのいる場所」のジョーイ・キング、「ムーン・ウォーカーズ」のロン・パールマン。脚本を「ニューヨーク 最後の日々」のジョン・ロビン・ベイツ、撮影を「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」のマルクス・フォーデラ―、音楽を「アデライン、100年目の恋」のロブ・シモンセンが担当する。
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翻訳家
篠儀直子
暴動の中心集団がホワイトウォッシュ(白人化)されているとの批判がすでにあるが、それを含めた数々の不正確さ・不適切さもさることながら、エド・マーフィの悪行を際立たせ、かつシーモア・パインとレイとのあいだにつながりを作ったせいで、「ひとりの悪人を成敗する」ことが一瞬物語の焦点であるかのようになってしまうのが、暴動の歴史的位置づけをすり替えていると同時に、この映画の作劇上のバランスを崩してしまっていてとてもまずい。よく演出されたシーンも時々あるのだが。
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映画監督
内藤誠
オバマ大統領がナショナル・モニュメントに指定したニューヨークの「ストーンウォール・イン」と周辺地区が、そこに居住したストリート・キッズともども活写されている。エメリッヒ監督はこれまでの娯楽大作では分からなかったラジカルな面を見せ、みずからゲイだと言うだけあって、演出のキメも細かい。プルーストやヴィスコンティを通じて、ヨーロッパの同性愛はソフトに教養ゆたかに、日本人に知られてきたが、アメリカでは扱いが乱暴だった。その抵抗の物語に笑いがあるのはいい。
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ライター
平田裕介
ゲイであるエメリッヒが、LGBTの権利向上運動の契機となった事件を題材に撮り上げた作品。とても意義があると思うが、そこはやっぱりエメリッヒである。事件を中心にした青春ドラマにしたいのか、容赦なく阻害されたLGBTの憤怒を描くドラマにしたいのか、きっちり史実を見つめたドラマにしたいのか。すべてを盛り込みたかったんだろうが、それぞれを継ぎ接ぎしただけの仕上がりに。良い意味で作りものっぽく再現された、60年代NYグリニッチ・ヴィレッジの街並みだけは◎。
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