ジムノペディに乱れるの映画専門家レビュー一覧

ジムノペディに乱れる

「ピンクとグレー」の行定勲によるロマンポルノ初監督作品。1週間撮れない日々が続く映画監督の古谷は、肌のぬくもりを求めて女たちの隙間を彷徨う。すべてを失った男が辿り着いた先に見つけたものとは? 日活ロマンポルノ・リブートプロジェクトにて上映。出演は、「ふきげんな過去」の板尾創路、ドラマ『ディアスポリス 異邦警察』の芦那すみれ、「かしこい狗は、吠えずに笑う」の岡村いずみ。
  • 映画評論家

    北川れい子

    日活ロマンポルノが再起動することになっての記者会見で、行定監督は、脚本は何でも自由というので、自分では美しいと思うスカトロの話を書いたら、日活から拒否された、とボヤいていたが、大いに期待した本作の主人公が、妙に女にモテる映画監督だったのはいささかこそばゆい。しかも知的でクールなエリック・サティのピアノ曲に先導されてというのだから。主人公が映画を撮るのは久しぶりで、しかも撮影は中断中という設定だが、映画にも女にも受け身の主人公の軟弱さにイラッ。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    先の十月に開催されてた荒木一郎特集上映、観てあらためて気づいたのはポルノにおける男優の大事さ。下半身に引きずりまわされケツを出して喘ぐカッコ悪さを通過したうえで何かを語り得れば、そいつはポルノがキマる男。ロマンポルノ過去作を思えば風間杜夫や北見敏之、坂本長利、高橋明、粟津號……ら(そのほかにも何人も)の独特のキャラクターを思い出すが、板尾氏はもうその域。過去作が予告してた監督行定勲はポルノがイケそう説も証明された。だが、新しさ、発見はあったか?

  • 映画評論家

    松崎健夫

    『ロマンポルノリブートプロジェクト』は即ち、各々の監督による〈ロマンポルノ大喜利〉なので「作品個々の評価よりもプロジェクト5作品内で相対的に評価すべき」というのが個人的見解。長回しが多用される本作では“フィックスの引き画”でも手持ちの撮影が行われている。そして、人が動き出すとカメラも動き出すというパターンを繰り返す。まるで「心の揺れ」=「カメラの揺れ」のように。物語は月曜日から土曜日までが描かれるが、これを某路線の6駅に置き換えてみるのも一興。

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