アシュラ(2016)の映画専門家レビュー一覧
アシュラ(2016)
「MUSA-武士-」のキム・ソンス監督が、悪人たちの地獄絵図のような闘いを活写した犯罪アクション。末期ガンの妻の治療費を稼ぐため、市長の悪事の後始末を請け負う刑事ドギョン。やがて市長の不正を暴こうとする検察に弱みを握られ、追い込まれていく。金のために何でもする刑事をキム・ソンス監督と4度目のタッグとなるチョン・ウソンが、彼を利用する悪徳市長を「ベテラン」のファン・ジョンミンが、彼を実の兄のように慕う後輩を「背徳の王宮」のチュ・ジフンが演じる。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
都市再開発に巣くう利権、市長-司法-警察の三つ巴の抗争、各陣営のはざまを泳ぎ回る悪徳刑事の主人公。だいたい話はついている(笑)。極辛舌痛のコリアンノワールだ。香港のジョニー・トーを頂点とするこのジャンルで目立つためには、とにかくバイオレンス描写を極辛化するしか方法がない。そして隠し味はいつも“鬼の目にも涙”だ。本作も例外ではなく、その塩っ気は相当なもの。ただそこが、ドライとウェットを天才的に使い分けるトー監督と他の作り手を隔てる分岐点である。
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脚本家
北里宇一郎
汚職刑事が悪徳市長と検察の間にはさまれてあっぷあっぷ。これがアメリカ映画だったら、最後の最後に知恵を使って大逆転となるんだろうけど、こちらはもうやられっぱなし。その終始受け身のところが、韓国的というかアジア風味というか。登場人物のキャラも、単純一色。悪い奴はひたすら悪い。裏表なく裏ばっか。ゆえに展開はただただ濃厚になっていくばかり。もうこうなったら行き着くところまで行っちまえ、みたいなヤケッパチのカタルシスも感じて。とはいえ、もうちっと頭も使ってよ。
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映画ライター
中西愛子
悪徳市長の裏仕事を引き受ける汚職刑事が、執拗に市長を追う検事に弱みを握られ板挟みとなり利用されていく。架空の街を舞台に、生き残りをかけた男たちの裏切りの物語が繰り広げられる。クライマックスの地獄絵も凄いが、迫力のカーチェイスや、中盤までの人間描写に緩急あるアクション(ユーモアすら含む)を絡ませリズムをつける渋い演出に唸った。韓国映画の層の厚さを再認識。そして俳優陣が圧巻だ。チョン・ウソン熱演。最近よく見る悪代官顔のクァク・ドウォンが気になる。
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