昼顔(2017)の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
別に呪縛されているわけではないが、私にとって「昼顔」といえば、カトリーヌ・ドヌーヴがルイス・ブニュエル監督の前で“女の不可知”さを演じきったあの秀作しかない。当然、ドラマ版は一切知らず、この映画版にしても、たかが不倫、されど純愛、とその辺は理解できたが、そもそも不倫疲れをしたヒロインが、誰も知り合いのいない海辺の町に越してくるという設定からして、ひと頃、流行したハーレクインロマンで、ヨリが戻ってのあの結末もロマンス小説並み。斎藤工の扱いが哀れ。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
面白い。うまい。しかし宣伝の方々からネタバレ緘口令をいただき、それを意識しながら書くのが面倒で、別のことを書く。この「昼顔」で、自分が夫を裏切っていたから自分もまた裏切られるのではと思う、というようなヒロインの台詞があってそれはよかったのだが、それを聞いて思い浮かべたのは、最近試写で観た映画の、惚れた女を悪い男から救い出した主人公が気づけばそいつと同じことを彼女に強いていたという愛欲因果が躍動する場面。内田伸輝監督「ぼくらの亡命」に星四つ。
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映画評論家
松崎健夫
情事の代償として都会を離れた主人公が誰もいない部屋へと帰宅する。暑さしのぎに彼女が扇風機をつけると、机上のチラシが風に舞う。観客は机上に残された封書を注視するが、主人公はそれに気付かず、拾い集めたチラシで隠してしまう。その封書が重要なのかと思えば…というように、スクリーンサイズを活かした視点誘導という映画的演出が展開。表情を映し出したカットを積み重ねるモンタージュ、終盤のカットバック等々、本作をTVドラマの続きを描いた単なる劇場版と侮るなかれ。
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