菊とギロチンの映画専門家レビュー一覧

菊とギロチン

「64-ロクヨン- 前編/後編」の瀬々敬久が、構想30年の企画を実現させた入魂の作品。大正末期。自由な雰囲気が失われつつある世相の中、東京近郊で出会った女相撲一座の女力士たちとアナキスト・グループ“ギロチン社”のメンバーが惹かれ合っていく。出演はTVドラマ『デリバリーお姉さん』の木竜麻生、「散歩する侵略者」の東出昌大、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の寛一郎、「霊的ボリシェヴィキ」の韓英恵。
  • 映画評論家

    北川れい子

    タイトルこそ挑発的だが、昨年の大林監督「花筐」と根っ子の部分で共通する青春群像劇の秀作だ。物語の軸になっているのは、さまざまな過去を持つ女力士たちで、革命団“ギロチン社”の面々は狂言回しに近いが、関東大震災直後という時代の空気の中での両者のすれ違いを、半端ではない登場人物の、半端ではないエピソードで繋げ、ガツンとくる。その割に重苦しさは控えめで、この辺りの脚本・演出もみごと。字幕やナレーションを使って情報を補足、いささか駆け足気味だが納得だ。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    お話をつくり、語ることの強く大きな意志を感じる映画だった。しかし、命革めることの流行らないいまの時代、これをどう広めていけばよいのか……序盤の女相撲興行の場面で女力士=女優たちがその肉体の力感を画面にあふれさせたあとは一気にノレて観れたが、それが鍵だろうか。私もまたこの映画のなかの男たちと同じく、血を吐くように“強くなりたい!”と表明する女性の姿をいくつかの映画の中で目撃したことによってハッとして、そのことで何とか生きてきたのだと思い出した。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    すべてのカットに「これを撮りたい!」という瀬々敬久監督の魂の叫びを感じさせる。その姿勢に牽引されたであろうスタッフ・キャストの熱も、当然のことながらスクリーンから溢れ出ている。世の不寛容さを伴った大正から昭和へと向かう端境期。その時代性が現在とシンクロする点に、本作を“いま観る”意義がある。女相撲を通して人間としての強さと生命力を身につけてゆく花菊の成長を眼差しと佇まいで表現した木竜麻生、その対となる韓英恵の演技アプローチが何よりも素晴らしい。

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