変魚路の映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
髙嶺剛ワールド全開で、何が何だかわからないのに、その言葉を紡いでは不断に無化するような映像の連鎖に、文字通り夢の世界を彷徨っているような、あるいはまた、奇怪な迷路に迷い込んだような不思議な魅力に捉えられる。ここは沖縄で、その光も匂いも、オキナワ以外ではあり得ぬと確かに感受しつつも、それでいながら、どこでもないどこか、という思いがつきまとう。だから、一度見ると癖になる、というよりは、映画館の暗闇で半覚半睡の状態で醒めて見、眠っては見たいと思う。
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映画評論家
上島春彦
映画と舞台のミックス・メディア「連鎖劇」の形式、と最初に説明あり。確かに二人の主人公の格好がそれっぽいが、中身はどんどん逸脱。有名な「ウンタマギルー」に比べると特撮合成の凝り方や細かい挿話の組み合わせ方にさらに磨きがかかり、物語の要約が不可能になっている。面白いのは双焦点レンズの使い方で、画面の左右、時間の進み具合が違うかのような感触をもたらす。映画を目指す人、というより現代美術作家に刺激を与える作品。ヘンでギョロっとした映画という意味だよね。
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映画評論家
モルモット吉田
前作でもデジタルとの親和性の高さを感じさせた髙嶺剛だが、その後の18年の沈黙期間中に進んだ技術によってデジタルとフィルムを混濁させた極彩色の琉球夢幻絵巻を出現させた。〈連鎖劇〉と称して現実と虚構の往来をいっそう激しくさせ、劇中で映写される画面の内と外ばかりか、現実のスクリーンも軽々と越えて飛び出すかのようだ。既存の表現に囚われることなく、自らの奇想を具現化させるツールとしてデジタルを活用した最良の例であり、沖縄映画の新時代到来を予感させる。
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