SYNCHRONIZER(シンクロナイザー)の映画専門家レビュー一覧
SYNCHRONIZER(シンクロナイザー)
「接吻」の万田邦敏監督によるサイコスリラー。人間と動物の脳波を同期させるという倫理を超えた実験に没頭する研究者の長谷川。そんな彼を盲目的に愛する同僚の萌は、長谷川が母親の認知症を治そうとしていることを知り、彼の研究を止めようとするのだが……。出演は「くちづけ(2013)」の万田祐介、「ジョギング渡り鳥」の古川博巳、「愛∞コンタクト」の中原翔子。撮影を「雨にゆれる女」の山田達也、音楽を「SHARING」の長嶌寛幸が担当する。
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評論家
上野昻志
これが映画だ、と改めて思う。俳優で見せる映画ではない。むろん、俳優が悪いわけではない。何よりも脚本と映像や音楽、それらを統括する監督の力によって成り立つ映画なのだ。しかも独特にエロティックな。脳波を示す無機的な曲線が、主人公の研究者と助手の女性が結ばれたところから、なぜかエロティックに見えてくる。そして、彼が認知症の母と治療のため脳波を同期させたことから、二人は禁断の愛の世界へ、さらには後戻り不可能な世界へと踏み込む。その過程が怖ろしい。
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映画評論家
上島春彦
前作で効いていた日本家屋がまたも登場する。最先端の研究室とこの四畳半実験室の対比が見どころになってもよかった。ただし前者が妙に陳腐。むしろ後者の貧乏たらしい手作り実験描写を徹底出来たら面白くなったのに。残念。母親に同調される子供というのは「サイコ」だろうが、性的にあからさまに出過ぎて効果を減じている気もする。これが中途半端な最大の理由は「脳波の同調と細胞再活性には本来何の関係もないのに、物語がそっちにねじれてしまった」こと。つじつまが合わない。
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映画評論家
モルモット吉田
緊密なショットのつなぎで映し出される狂ったメロドラマを惚れ惚れと眺める。ヒトと動物との脳波接続実験がもたらす悲劇は「蝿男の恐怖」などの類似作から予想できる通りだが、認知症の母と接続することで母子の愛情が露わとなり、息子である主人公とヒロインとの関係が同時進行するのがいい。三角関係の異形の恋愛劇という素晴らしい設定が構築されたところで、母が変身を遂げるのだからつまらないわけがない。こうした物語を何でもない日本家屋の和室で展開させたことも驚嘆。
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