密偵の映画専門家レビュー一覧
密偵
「悪魔を見た」のキム・ジウン監督、「弁護人」のソン・ガンホ主演によるサスペンス。日本統治下の朝鮮半島。日本警察所属のイ・ジョンチュルが独立運動団体“義烈団”監視の特命を受ける中、義烈団は日本の主要施設を破壊する爆弾を京城に持ち込もうと画策する。共演は「新感染 ファイナル・エクスプレス」のコン・ユ、「チャンス商会 初恋を探して」のハン・ジミン、「ポエトリーエンジェル」の鶴見辰吾、「隠された時間」のオム・テグ、「マグニフィセント・セブン」のイ・ビョンホン。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
まったく確信犯ではない、自分でもよくわからないうちに二重スパイになってしまう男という複雑な役柄を見事に演じ切るソン・ガンホはもちろんいいのだが、理想のためならテロをも辞さない反体制側の中心人物に扮するコン・ユが実に好演している。狡猾なんだか間抜けなんだかわからないイ・ビョンホンも印象的。叙事詩的なタッチはハリウッド映画、スコセッシ作品なんかを思わせる。ストーリーテリングはちょっと不器用な所もあるけれど、とにかく見せ場連続だし、最後まで飽きさせない。
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映画系文筆業
奈々村久生
勢いに乗っているコン・ユ、安心と信頼のソン・ガンホ、フィクサーのイ・ビョンホンという絶妙なバランスの布陣。ガンホの低くしわがれた抑揚のない日本語は、感情のこもっていない感じが、抑圧された環境を生きる葛藤の違和感として残る。1920年代当時を再現したクラシカルな美術と照明、衣裳が眼福。「イングロリアス・バスターズ」を意識したであろう爆破シーンはボレロの使い方もしてやったり。ラストの青年役のクォン・スヒョンは大抜擢で美味しい役どころだ。
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TVプロデューサー
山口剛
日本の植民地支配下の朝鮮を舞台とする骨太のスパイ映画。主役のソン・ガンホは朝鮮人でありながら抗日ゲリラ義烈団を追及している日本警察の警部。彼が最後まで日帝の狗であるわけがないことは観客は皆判っているが、それによってサスペンスが弱まることはなく最後まで緊張感は持続する。「バルカン超特急」さながらの列車内のスパイ狩りから終盤のクライマックスへ一気に流れ込み余韻を残して終わる。日本及び日本人の描き方も納得がいく。
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