ロダン カミーユと永遠のアトリエの映画専門家レビュー一覧
ロダン カミーユと永遠のアトリエ
『考える人』などで知られる彫刻家オーギュスト・ロダンの没後100年を記念して制作された伝記ドラマ。1880年、『地獄の門』の構想を練っていたロダンは、弟子カミーユとの関係を深めていく。しかしロダンには、決して別れることのない内縁の妻がいた。監督は、「ポネット」のジャック・ドワイヨン。出演は、「ティエリー・トグルドーの憂鬱」のヴァンサン・ランドン、「サンバ」のイジア・イジュラン。第70回カンヌ国際映画祭コンペティション作品。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
「ル・コルビュジエとアイリーン」「ネリー・アルカン」など、芸術家についての出来の悪い伝記映画が最近は横行している。本作も当初は、なぜドワイヨンほどの人が今さらロダンとカミーユの愛憎をやらなければならないのかと不審に思った。ラストの箱根彫刻の森の実写も蛇足だし、つい出資元の意図かと邪推してしまう。だがドワイヨンはドワイヨンである。工房での手の動き、物事を見通す視線、作業音、そのすべてが単に伝記であることを超越して、ただただ映画の方を向いている。
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脚本家
北里宇一郎
ほとんどがアトリエで展開される。ロダン、その人の創作の現場を主とした構成。撮影が渋い。『地獄の門』の悲痛、『バルザック像』の人間臭、それが世間から受け入れられぬ焦燥。加えてあのカミーユとのしがらみも絡めて。もういくらでも粘っこくなる題材。だけど観終わった印象は、意外にさらりとした感触で。エピソードはある。だけどそれがスケッチ程度にしか迫ってこない。するとこの監督が、映像のスタイリストに思えて。もっともっとロダンを抉るような泥臭さもほしかったという欲が。
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映画ライター
中西愛子
成功を得てまもない壮年期のロダンの日々を、ジャック・ドワイヨンが骨太なタッチで描き切った野心作。良くも悪くも、芸術家像をまるごと背負っているようなロダン。その姿をありのままを見つめるように、浮かび上がらせ、容赦なく切り込む。カミーユ・クローデルとの関係も含め、特に女性としては肯定しづらい人物像だが、ロダンを演じるヴァンサン・ランドンが全身全霊で役に挑んでいて、芸術家の業と純真を表すドラマとして見応えがある。終わり方が意外な着地点であった。
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