ノクターナル・アニマルズの映画専門家レビュー一覧
ノクターナル・アニマルズ
ファッションデザイナーのトム・フォードによる7年ぶりの監督作。新しい夫と共に暮らすスーザンのもとに、20年前に離婚した元夫エドワードから、彼が書いた小説が送られてくる。その小説に非凡な才能を読み取ったスーザンは、元夫と再会を望むようになる。出演は、「メッセージ」のエイミー・アダムス、「ライフ」のジェイク・ギレンホール、「ドリーム ホーム 99%を操る男たち」のマイケル・シャノン、「ザ・ウォール」のアーロン・テイラー=ジョンソン。第89回アカデミー賞助演男優賞ノミネート(マイケル・シャノン)、第74回ゴールデングローブ賞助演男優賞受賞(アーロン・テイラー=ジョンソン)、第73回ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ受賞。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
下手なホラーなんて目じゃないほどの恐怖で見る側を追いつめてくる猟奇スリラーだが、芽の出ない小説家が、別れた元カノに捧げる悔悛と憎悪の表明でもある。彼に見切りをつけ、適当なところで勝ち組に乗った彼女は、小説の中で断罪され、陵辱され、その上で夫によって犯人を罰してもらうという、押しつけがましい手続きに戦慄する。と同時に彼女の愛が再点火するようなのだ。このややこしい心理の襞は、ファッション業界で成功を手にしたトム・フォードの自己懲罰にも思える。
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脚本家
北里宇一郎
現在と過去、それに小説の世界が入り混じった展開。その小説部分の家族受難サスペンスは(よくある話ながら)緊迫感がある。冒頭のフェリーニ・スタイル、殺人死体のショック。この監督、映像感覚が新鮮だ。アートな現実、殺伐の虚構。この二つがどう絡むのか、息を詰めて見守った。が、この結末には気が抜けた。小説家って、確かに生活に対しては無力だろうが、その精神はもっと強靭ではなかろうか? なんだかこれ、作家に憧れているアーティストが背伸びして作ったような映画に思えて。
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映画ライター
中西愛子
アートギャラリーのオーナーとして、富と地位を手に入れたスーザン。それと引き換えのように捨てたかつての愛。遠い記憶が、元夫から突然送られてきた1冊の本によって甦る。元夫とその小説の主人公を演じているのは、ジェイク・ギレンホール。つまり、スーザンは、元夫の顔を思い浮かべて本を読んでるわけだ。このふたつのジェイクの顔で進む語りが、トリッキーな復讐譚としてじわじわ効いてくる。トム・フォードのアートセンスと俳優陣の人間臭い演技に注目。結構心にキツく刺さる。
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