ある決闘 セントヘレナの掟の映画専門家レビュー一覧

ある決闘 セントヘレナの掟

ウディ・ハレルソンとリアム・ヘムズワースが「ハンガー・ゲーム」シリーズに続き共演した西部劇。メキシコ国境の川に死体が多数あがり、川上の町に調査に向かったテキサス・レンジャーのデヴィッドは、町を掌握する説教師エイブラハムと因縁の再会を果たす。映画化されていない優秀な脚本を選ぶザ・ブラックリストに2009年に挙げられた脚本をもとに、「赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター」など俳優としても活躍するキーラン・ダーシー=スミスがメガホンを取り、アメリカの闇を映し出す。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    まさに『闇の奥』、というよりも「地獄の黙示録」的な導入部(ただしカーツ大佐はとっとと登場する)のあと、何が謎なのかもわからないがとにかく謎めいている展開がもやもやと続き、もしや途方もなく深遠な哲学的主題を扱っている映画なのではと思わされるけれど、やがて明かされる陰惨な真相は、それほど意外でもなければ深くもない。米国とメキシコの国境や、福音主義と白人至上主義との結びつきが、米国でものを創る人々の想像力をいかにかきたてているかがわかるのも興味深い点。

  • 映画監督

    内藤誠

    全体が謎めいた重苦しい空気感の西部劇。脚本家のマット・クックが「地獄の黙示録」と同じく、コンラッドの『闇の奥』にヒントを得ているからで、テキサス・レンジャー役のリアム・ヘムズワースよりも悪の力によってリオ・グランデ川沿いの町を支配するウディ・ハレルソンに目がいってしまう。彼もまた頭を剃り、ブランドを意識した演技。妖しい呪術によって町の住民たちを操作していく。ヘムズワースのメキシコ人の妻アリシー・ブラガまでもがひきこまれていくのが見ていて怖い。

  • ライター

    平田裕介

    「地獄の黙示録」か『闇の奥』、またはカルト教団“人民寺院”を下敷きにしたウエスタンといった感じ。なんだか静謐で深遠なトーンで貫かれているが、主人公と狂信的リーダーとの因縁、潜入捜査、メキシコ人迫害といった要素を放り込んで飽きないようにはなっている。剃り落とした両眉の代わりに刺青を施すなど、狂信者に扮したW・ハレルソンはやりすぎの気もするがなにかと持っていくのは確か。余計なBGMなど一切入れない、ライフルによる狙撃戦が展開するクライマックスに激燃え。

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