パターソンの映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
僕は「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」よりこっちの方が好きですね。とてもジャームッシュらしい「本筋のない映画」。文学者、それも架空の詩人や小説家を描いた映画ってなかなか良いのが思いつかないけど、流石としか言いようがない。アダム・ドライヴァーの不機嫌じゃない仏頂面も魅力的だし、脇が皆すごく良い顔をしている。僕が好きなのはエミリ・ディキンスンのことを話す少女詩人と会話を交わすところ。あとはやっぱりラストシーン。永瀬正敏は美味しい役だけど、良い。
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映画系文筆業
奈々村久生
デビュー作の「パーマネント・バケーション」(80)の翌日に作られたかのようなたたずまい。それだけジャームッシュは最初から完成された作家性をともなって登場したし、以降それをキープし続けている。一見穏やかなルーティンの日々に美しい妻の作る斬新な柄のカップケーキが何とも言えない不穏な気配を放つ。しかしいつどうなるかわからない危険性を孕んだままそれが爆発しない時間を一日でも長く延ばすことこそが、我々が「平和」と呼んでいる状態にすぎないのだ。
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TVプロデューサー
山口剛
毎朝妻の作った弁当を持って出勤しバスを運転し、帰宅後は犬を散歩させ一杯のビールを飲む。判で押したような日々。彼は詩を書いている。日本通のジャームッシュの念頭に日本の私小説作家があったような気がする。上林暁、木山捷平、川崎長太郎みな詩人でもあった。永瀬正敏演じる日本詩人は、奇しくもパターソンと名乗るバス運転手と詩について語り彼を詩人と確信する。詩を書くバス運転手の映画ではなく、バスを運転する詩人の映画なのだ。静かな彼の日常が深い余韻と感動を残す。
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