ストロングマンの映画専門家レビュー一覧
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映像演出、映画評論
荻野洋一
経済破綻が報じられたはずのギリシャで、ブルジョワ野郎どもが悠々とクルーズに興じている。世界中に喧嘩を売っているこの設定だけでも、リンクレイター「スラッカー」に出演したというギリシャ人女性監督に快哉を送りたいが、事はそれで終わらない。映画は終始エーゲ海に浮かぶ高級ボート内という限定空間だけが被写体であるにもかかわらず、カメラが優秀なのか、充実したカットの目白押しである。男同士のイヤらしい見栄の張り合い劇を、なにもここまでちゃんとやらなくても……。
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脚本家
北里宇一郎
ヒマと金のある六人のオッサンたちが、海上のクルーズ船中で誰が最高かを競い合う。観ているとバカバカしい。だけど米国の、からだは大人だが頭はガキのまんまの連中が騒ぎまくるコメディーみたいな騒々しさがない。この男たちを見つめる監督(女性!)の筆遣いが冷静なのだ。どこか彼らを観察している趣きで。やがて、現実とは違うゲームの規則、そこにしがみつき、己を賭ける男というもの、その本質が滲みでて。M・フェレーリの「最後の晩餐」の精神とどこか通じる“男”映画の佳作。
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映画ライター
中西愛子
6人のオヤジたちが船上に集まり、数日間のクルージングへ。それぞれの日常言動を評価し、一番点数の高い“最高の男”を決めるゲームを開始する。ギリシャの女性監督の作品だが、彼女の感性、日本のいわゆる腐女子の感性に近くないか? 登場するのはムサ~イ中年たちなのに、みなどこか美しい。キラキラしてる。キャスティングでは、“自分に潜む女性的な部分を恐れない男性”を求めたそう。まさに男臭いヴィジュアルから零れる繊細さが堪らない。セコさもご愛嬌。笑えるし。許せます。
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