ヒトラーへの285枚の葉書の映画専門家レビュー一覧

ヒトラーへの285枚の葉書

ドイツ人作家ハンス・ファラダがゲシュタポの文書記録を基に執筆した小説『ベルリンに一人死す』を映画化。1940年、恐怖政治に凍てつくベルリン。ヒトラーの忠実な支持者だった平凡な労働者夫婦が、一人息子の戦死をきっかけにナチス政権へ絶望的な闘いを挑む。出演は「ウォルト・ディズニーの約束」のエマ・トンプソン、「未来を花束にして」のブレンダン・グリーソン、「僕とカミンスキーの旅」のダニエル・ブリュール、「悪党に粛清を」のミカエル・パーシュブラント、「パッション・ベアトリス」のモニーク・ショメット。「王妃マルゴ」「インドシナ」などの俳優として知られるヴァンサン・ペレーズによる長編監督第3作。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    ハンス・ファラダの小説『ベルリンに一人死す』の映画化ということで期待して観た。感動した。実話映画についてよく文句を書いてますが、これは沢山の人に知られるベき実話。監督ヴァンサン・ペレーズは正攻法のスタイルで原作に取り組んでいる。だがもちろんこの映画の核心は、クヴァンゲル夫妻を演じたエマ・トンプソンとブレンダン・グリーソンだ。「夜に生きる」でも好演していたグリーソンの不機嫌そうな真顔が素晴らしい。しかしやっぱり出来ればドイツ語で喋ってほしかった気も。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    市井の小市民による命がけの抵抗。そのために選ばれた手段は直筆のメッセージ。筆跡を偽りながら一枚一枚書き上げ、自らの足で街角に運ぶ。そうした地道な行動の積み重ねがしかし情報カットとしてしか撮られていない。身の危険を冒しても綴らずにはいられなかった直筆の文字にはそれだけの思いが込められているはずだからこそ、葉書を書き置いてくるカットはもっと丁寧に撮られるべきだったのでは。その中でダニエル・ブリュールだけが異次元の熱量を放っている。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    同じように反ナチのビラを撒き斬首刑になった白バラ抵抗運動のショル兄妹(映画「白バラの祈り」)が大学生の活動家だったのと違い、主人公は一介の工場労働者で妻はナチの婦人部のメンバーでさえある。政治的思想的な動機で始まったものでなく、支援者や組織を持たない単独犯であることが多くのレジスタンスの物語と違うところで興味深い。逮捕から処刑に至る終幕は、素っ気ないほどの簡潔な描写だがそれがかえって夫婦愛を静かに訴え余韻を残す。二人の名演が印象的。

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