リングサイド・ストーリーの映画専門家レビュー一覧

リングサイド・ストーリー

「百円の恋」の武正晴監督が、佐藤江梨子×瑛太をW主演に迎えて撮り上げた人情喜劇。職を失ったカナコは、ひょんなことからプロレス団体で働き始める。彼氏で売れない役者のヒデオは、そんなイキイキとしたカナコの姿に嫉妬し、驚きの行動に出てしまうが……。共演は「家族はつらいよ2」の有薗芳記、「サバイバルファミリー」の田中要次、「あまっちょろいラブソング」の伊藤俊輔、「ヒーローマニア 生活」の村上和成、「きみはいい子」の高橋和也、「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」の峯村リエ、プロレスラーの武藤敬司、黒潮“イケメン”二郎、K-1王者の武尊。一般公開に先駆け、2017年7月15日、特集企画『カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2017』にて上映。
  • 評論家

    上野昻志

    瑛太は、ダメ男を演じると天下一品だね。ここでの、甘ったれで、自己評価だけ異常に高いダメ男ぶりは、見ているこちらまで苛々して、同棲相手にサッサと別れろ、と言いたくなるくらいだから大したもんだ。そのぶん、佐藤江梨子演ずる相手のカナコが、健気で可愛く見えるから、話としては成功しているということか。対して、黒潮“イケメン”二郎をはじめ、プロレスの連中が、実にさわやかにカッコよく見えた。また、知らなかっただけに、レスリングのリング作りに目を惹かれた。

  • 映画評論家

    上島春彦

    かわいいダメ男としっかり者の彼女、という物語は基本自閉的なので一歩間違えると過剰にナルシスチックになりがちだが、これは下町コメディ風味を強調したおかげでそうした悪弊を免れている。周囲の人物との関わりを上手にすくい取っているのだ。餃子パーティというのが特にいい。右胸と右腕の筋肉だけが発達している主人公の設定も無理がなく、これは瑛太の次の主演作に引っ掛けているのかな。彼女の方の商売替え事情もポイントで、徐々に佐藤が生き生きとしてくる感じが効果的だ。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    水増しみたいな描写がやたらと目につく昨今、100分強でテンポを落とさず見せる作品は貴重。しかし、「百円の恋」でも感じたが労働や金銭が記号でしかなく、省略が描写のサボりに見えてしまう。家賃はどうすると言いつつ瑛太は自らが斡旋したサトエリの職場で妨害行為を繰り返し、挙句に本業の俳優業でも撮影当日に現場に行かないという売れない俳優としては致命的な行為を取っても意に介さない。喧嘩しても次のシーンでは仲直りしているが、その間に何があったのかを見たい。

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