食べられる男の映画専門家レビュー一覧

食べられる男

第12回シネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)助成企画として制作された近藤啓介監督による長編デビュー作。地球平和のため、1週間後に宇宙人に食べられることを宣告された工員の村田。やりたいことリストを作り、離れて暮らす娘・詩織に会いに行くが……。出演は「Anniversary アニバーサリー」の本多力、「適切な距離」の時光陸、「「ハッピーアワー」の申芳夫。一般公開に先駆け、2016年3月『第11回大阪アジアン映画祭』、2017年2月『第12回CO2東京上映展』にて上映。
  • 評論家

    上野昻志

    工場で、仕事には熱心に取り組んでいるものの、同僚に話しかけられると、普通の応答ができずボーッとしている男を演じた本多力が出色。P星人からの「被食者認定証」が届くと、工場の後輩に誘われて居酒屋に行ったり、彼から紹介された若い女に付きまとわれたりしながら喰われるまでの1週間を過ごすのだが、そこからは、食べられる=死であることを自覚しないまま流されていく男の感じをよく出している。そんな彼を食べたP星人が、不味いというのには思わず笑ってしまったのだが。

  • 映画評論家

    上島春彦

    かつてのSFテレビドラマ『ミステリーゾーン』が25分で描くような物語をわざわざ三倍かけて映画にするのに、このアイデア不足はどうしたものか。しかも説明が長い。この設定なら学校の先生の授業なしで描いてくれなきゃ映画にならんよ。それとも三話オムニバスにするとか何かもっと手はあったのではないか。それとこの脚本家は、自分が一週間後に食べられるなら何をするか、という基本的な部分をそれほど大事にしていない感じがする。どうやらオチから考えたのではないだろうか。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    藤子・F・不二雄の『いけにえ』+『ミノタウロスの皿』と思わせる話だが、宇宙人による地球人被食制度が一般化した社会という基本的な世界観が最初に上手く提示されていないので入りにくい。主人公もその理不尽さに抵抗するでもなく、これでは難病で一週間後に死ぬ話でも代替可能。演劇的な状況設定や強引な展開に、舞台なら成立するだろうなと思うこと多し。主人公の〈食〉が大きな意味を持つはずだが、コンビニ弁当を完食するまで長回しでこれ見よがしに撮るだけでは伝わらず。

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