きみの鳥はうたえるの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
いささか大袈裟になるかもしれないが、トリュフォー監督「突然炎のごとく(ジュールとジム)」に匹敵する恋愛映画の傑作だ。と言っても恋だの愛だのが表だって描かれるわけではない。同居生活を送る“僕”と静雄の日常の中にサラッと入り込んできた佐知子。僕と佐知子は同じ書店で働いていて、最初は佐知子が僕にコナをかけてきたのだが。3人が共有する遊びの時間の丁寧な描写が危なっかしいほど屈託がなく、演出を一切感じさせない動きや台詞も素晴らしい。そして函館の空気感。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
F・ラング作品を上映している映画館で四宮秀俊氏に遭遇したので、おめーのロビー・ミューラーごっこで近藤龍人キャメラマンが築いてきたものが台無し、と言ってやったがそれはあまりにもよかったことへの照れ隠し。また新しい佐藤泰志映画。画も音もディープ、同時に澄んでいる。素晴しいスタッフだ。柄本佑の帽子はポルトガル土産だそうだが、なぜ行った? オリヴェイラが好きだからだろう。そんな映画バカにして実力ある映画人たちの心地よい集まりが現代日本映画を進めている。
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映画評論家
松崎健夫
「突然炎のごとく」や「はなればなれに」がそうであったように、“ドリカム編成”の男女は、やがてひとりが溢れる運命にある。ビリヤードやピンポンという遊戯の人数構成は、その運命を暗示させている。映画はフレーム内の事象を観客に提示するが、本作ではフレームの外側を〈音〉で感じさせることによって空間を演出。そして、画面上では決して交わることのない“視線”のやりとりを実践した書店内のシーン。唐突に切り替わる“接吻”を裏付けるカット割は、もはや神懸かっている。
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