台北ストーリーの映画専門家レビュー一覧

台北ストーリー

「クー嶺街少年殺人事件」のエドワード・ヤンが1985年に手掛けた長篇第2作。ボローニャ市立シネマテークによるデジタル復元版。家業を継いだ元リトルリーグのエースアリョンと、米国に移住することを考えている幼馴染の恋人アジン。2人の関係を、変貌する台北を舞台に描く。主演・製作・共同脚本は、「黒衣の刺客」のホウ・シャオシェン。4Kデジタル修復され、2017年日本劇場初公開。2024年7月20日より『台湾巨匠傑作選2024』で劇場上映。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    私たちの世代は台湾ニューウェイヴを発見した世代だ。80年代、学生の時に池袋で催された台湾映画祭で「恐怖分子」に衝撃を受けて以降、楊徳昌の活動にリアルタイムで伴走したという思いがある。本作が同映画祭で紹介された時の邦題は「幼馴染み」だった。今、再見するに際し、万感の思いが去来する。そしてこれは名作によくあることだが、初見時とは印象が違う。単なるカップルのすれ違い物語であるだけでなく、迪化街という台北の問屋街の歴史と空気へのオマージュだったのだ。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    経済成長期の八〇年代台北。時代の変化に違和感をもつ男と、その波に乗ろうとする女。その心のすれ違いが描かれて。日本にもかつて、時代に対して異議申し立ての映画があった。その作品群に較べれば、こちらは昂奮もしない、絶叫もしない。その静かな語り口が、かえって絶望の深さを感じさせ。米国人でも日本人でもなく、ましてや中国人でもない。これは台湾人のアイデンティティー探しの映画にも思える。が、この浮遊感は万国共通だ。夜のバイク疾走は「フェリーニのローマ」を。

  • 映画ライター

    中西愛子

    エドワード・ヤンの長編第2作。主演は、これが唯一の主演作となる盟友ホウ・シャオシェン。幼なじみで、何となく付き合いが続いている男女が、台北の街で、過去と未来に思いを巡らせながら関係をこじらせていく。80年代半ば。当時の台湾の若者にとって、日本がどんな存在だったかがよくわかる描写も多く、スクリーンから80年代の風が立ち込めて眩暈。4K修復版のせいもあってか、とにかく街の風景がクリア。後半の夜景のシーンは圧巻。映画史に残る奇跡の瞬間をぜひ劇場で!

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