潜入者の映画専門家レビュー一覧

潜入者

麻薬王パブロ・エスコバルの組織に約5年間潜入捜査をしたロバート・メイザーの回顧録をベースにした犯罪サスペンス。1980 年代、エスコバルの巨大麻薬カルテルを内部から崩壊させるために、ベテラン捜査官ロバート・メイザーは架空の大富豪を装い近づく。監督は「リンカーン弁護士」のブラッド・ファーマン。「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」のブライアン・クランストンが、大胆不敵な計画を実行するベテラン捜査官を演じる。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    「トランボ」での演技が素晴らしかったB・クランストンが、麻薬捜査官として頑張る。コロンビアの資金洗浄組織に潜入しての捜査は緊張をきわめ、組織を追いつめるはずの主人公が、どんどん精神的に追いつめられていく。この逆説こそ本作の面白さだ。組織のコロンビア人たちには、残忍さと同時に、人情に厚い仲間意識がある。この人間性が本作に勧善懲悪を揺さぶる味を加えている。心理ゲームにあって、罪悪感を抱くのは覆面捜査官たちであり、それを見守る私たちの方なのである。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    潜入捜査ものは数あれど、これは活劇ではなく実録風。標的が麻薬王エスコバルというのが興味津津。主人公が大富豪に化け、マネーロンダリングを餌に敵を一杯ひっかける作戦が面白い。主人公の捜査官の家庭描写も取り入れ、夫・父としての素顔も見せる。これがあるおかげでピンチ場面のスリルにリアル感が。B・クランストンのうろたえ演技が見ものだが、チト表情が豊かすぎの感も。敵側の夫婦を裏切る話はもう少し丁寧に見たかった。敵味方を越えた友情っていうノアールの定番をね。

  • 映画ライター

    中西愛子

    不屈の精神を持った知恵者にして、家族思いという点で、記憶に新しい当たり役“トランボ”と通じるが、今回、ブライアン・クランストンが演じるのは、世界最大の麻薬組織への潜入捜査官ロバート・メイザー。この実在の人物による回顧録を原作に、80年代の裏社会を緊張感ある人間描写で筆致。好演する俳優陣、みんな顔が怖い。男たちがまとう威圧感とギトギトした欲望、また静かな凶暴さを鋭くスパークさせる演技の応酬がスリリングで見応えあり。ホントかいな、と思うような話だが。

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