トンネル 闇に鎖(とざ)された男の映画専門家レビュー一覧
トンネル 闇に鎖(とざ)された男
崩落したトンネルに閉じ込められた男の救出劇。自動車ディーラーのジョンスは妻子の待つ家へ車を走らせていた。車が山中のトンネルに差し掛かると、トンネルが崩落し、ジョンスは生き埋めになってしまう。救助隊長のキムらが駆け付けるが、状況は深刻だった。出演は、「お嬢さん」のハ・ジョンウ、「私の少女」のペ・ドゥナ、「暗殺」のオ・ダルス。監督・脚本は、「最後まで行く」のキム・ソンフン。第37回青龍映画賞6部門ノミネート、第53回大鐘映画祭5部門ノミネート。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
ハ・ジョンウとペ・ドゥナというトップスターの出演も相俟って本国では大ヒットを記録した作品。ハリウッドでも最近よくある独りサバイバルものだが、崩れ落ちたトンネルの車内に閉じ込められるという極端な閉鎖状況で2時間の上映時間をどうやってもたせるかが見物。やはりジョンウは「お嬢さん」の片言詐欺師よりもこっちの方がハマっている。ドゥナは少し疲れた雰囲気が魅力的。人物についていく移動撮影にはセンスを感じる。トンネルの中の孤独と、外の大騒ぎのコントラストが効果的。
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映画系文筆業
奈々村久生
ガソリンスタンドのサービスで渡されたペットボトルの水二本。乗客はお礼を言って受け取るや否やぞんざいに後部座席へ放り投げる。この演出とハ・ジョンウの芝居による伏線が効いている。危機下での一人芝居は「テロ,ライブ」での実績があるハ・ジョンウの独壇場かと思いきや、安心のオ・ダルスと手際の悪い部下とのやり取りを映像的なコミカルさにつなげるなどセンスを感じるが、中盤以降は結末から逆算したご都合主義感が否めず持ち駒を活用しきれていないのが惜しい。
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TVプロデューサー
山口剛
説明抜きでいきなりトンネル崩落事故に主人公は巻き込まれる。閉じ込められた彼の恐怖と地上で展開する大規模な救出作業をカットバックさせながら最後まで緊張感を持続させ、家族愛、国家と個人といったテーマを浮かび上がらせた脚本監督のキム・ソンフンの手腕は見事だ。この手の映画ももはやアメリカの独占ではない。終始一人芝居で人間的魅力を表現したハ・ジョンウがいい。朴槿恵に似た大統領を登場させ、個人の命は地球より重いという国家的欺瞞を皮肉るのも効果的。
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