君はひとりじゃないの映画専門家レビュー一覧
君はひとりじゃない
心の再生をユーモアを交えながら撮り、第65回ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)を受賞した人間ドラマ。母を病で亡くしたオルガは摂食障害に、検察官の父は死に何も感じられなくなる。オルガを託されたセラピストのアンナは、思わぬ方法でリハビリを行う。ポーランドのアカデミー賞とされる第18回イーグル賞(ポーランド映画賞)で、作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞を獲得。劇場公開に先駆け、第28回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門(上映タイトル「ボディ」/上映日:2015年10月25日、26日、30日)およびポーランド映画祭2016(上映タイトル「ボディ(原題)」/上映日:2016年11月27日)にて上映。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
タイトルからは全く想像出来ない作品だった。偶然だがこれも母親が亡くなることから物語が始まる。心を病んだ父と娘、そこに現れるセラピストの女性。妙に白茶けたシュールな空間で行なわれるセラピーの場面も興味深いが、次第に映画は意外過ぎる方向へと走り始める。これはちょっと驚いた。まさか○○映画になるとは! 出来れば事前情報一切抜きで観て欲しい。ちょっと「ありがとう、トニ・エルドマン」にも似た、これってもしかして笑わせようとしてるの?という感じもユニーク。
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映画系文筆業
奈々村久生
ひとりじゃないってそういうことか! という若干トリッキーな展開に気づくと心を?まれる。大きなショックに直面した人の傷つき方は時に予想のつかないものであり、予想もつかないやり方で癒されたりもする。正解などないのだ。自分でもどうしていいかわからず悪戦苦闘する父娘の姿はユーモラスな視点を織り交ぜながら描かれる。真剣と滑稽は紙一重。セラピーのシーンは笑って正解だと思う。その極みが降霊術だ。映像になったときにあんなにも絵面として残酷で面白い行為はない。
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TVプロデューサー
山口剛
妻に先立たれ、精神を病む娘と生活している主人公は検察官という職業柄、科学万能の即物的な世界に生きているが、そんな世界に疑問を抱いている。ヒロインは霊媒や降霊儀式などを行っているセラピストで二人の「霊」を巡る葛藤と娘の救済がテーマとなっている。オカルトでもホラーでもなく克明に日常を描くドラマに組み込まれた「霊」の問題、黒沢清の映画や、最近のオリヴィエ・アサイヤスの「パーソナル・ショッパー」など世界に共通する、現代に残された大きな問題なのだろう。
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