人生はシネマティック!の映画専門家レビュー一覧
人生はシネマティック!
「17歳の肖像」のロネ・シェルフィグ監督ヒューマンドラマ。第二次大戦中のロンドン。コピーライター秘書のカトリンは、戦意高揚映画を作る政府の映画局から新作映画の脚本家にスカウトされる。彼女の脚本のもと「ダンケルクの戦い」にまつわる映画を撮ることに。執筆経験がないながらも奮闘するヒロインを「ボヴァリー夫人とパン屋」のジェマ・アータートンが演じるほか、「世界一キライなあなたに」のサム・クラフリン、「パレードへようこそ」のビル・ナイら豪華英国俳優陣が集結。
-
映像演出、映画評論
荻野洋一
Ch・ノーランとは一八〇度異なる視座からダンケルク撤退作戦が映画化されたのは興味深い。ロンドンの主婦が脚本家として一人前になっていくサクセスストーリーと、ダンケルクの人命救助を国威発揚に利用しようとがんばる映画製作現場の葛藤が、人情味豊かにからみ合う。しかしそれで納得してはいけない。これはノーラン以上に国威発揚、戦意昂揚のプロパガンダでもある。問題は、現代においてこのようなプロパガンダへの抵抗感が薄れている点だ。やはり世界は悪化している。
-
脚本家
北里宇一郎
映画制作現場を舞台にした作品には面白いものが多いが、これも優秀な一篇。ダンケルクを題材にした戦意高揚映画づくりというのがいい着想で、脚本家と情報省との攻防戦には苦笑されっ放し。新人女性ライターを主役にして、先輩や老優が映画界に導いていく構成も巧い。米国に受けるためにマッチョ男優を起用、途端に演出が冒険活劇になる挿話など爆笑。が、何よりも戦争という厳しい現実、それとは違う虚構の世界。でもそこに救いがあり、真実が宿るという映画の本質が込められていて。
-
映画ライター
中西愛子
第二次世界大戦時のロンドン。プロパガンダ映画の脚本家にスカウトされたコピーライターの女性の奮闘が描かれる。女性の視点が買われたのだ。とはいえ、事実を基にした物語の映画化はそのまま描いてもダメで、何とか“作品”にしなきゃいけないと女性は男性の相棒と知恵を絞る。ヒロインは美人に。もっと大胆に、勇敢にと。その辺りの映画脚色の舞台裏が、仄かなロマンスの匂いも交え垣間見られて楽しい。主演ジェマ・アータートンの存在感も魅力。映画が夢であった時代の一端だろう。
1 -
3件表示/全3件