地獄愛の映画専門家レビュー一覧
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映像演出、映画評論
荻野洋一
連続殺人鬼カップルの地獄行だが、男は小悪党のジゴロに過ぎない。彼が金持ち未亡人に狙いを定めて誘惑作戦を始めるたびに、嫉妬に狂ったヒロインが台無しにしてしまうという連続に、ただただ苦笑を禁じ得ない。愛と狂気によって解放されてしまったヒロインは、いわば増村保造映画の若尾文子をホラー的に解釈したもの。愛する男のためだったら我が子も棄てるし、殺人も犯すし、死体をバラバラにもする。これもまた生の謳歌だろう。ただし、増村=若尾の到達点にはまったく叶わない。
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脚本家
北里宇一郎
同じ題材の「ハネムーン・キラーズ」「ロンリーハーツ」と較べると、これが一番トンガっているようで。とにかくテンションの高い映画で、血にまみれた狂恋ぶりを、幻想場面もまじえてこれでもかと描写する。見ていて長谷部安春監督の「暴行切り裂きジャック」を連想。あちらはスタイリッシュなタッチが功を奏し映画的快感があったが、こちらは演出が濃いわりには意外に印象に残らない。人間描写が類型の域に留まっているせいか。どうも鬼面人を驚かすの類の映画だという気も。はたして。
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映画ライター
中西愛子
筋金入りの結婚詐欺師の男と、それを承知で彼と恋に落ちた女。兄妹と偽り詐欺を繰り返すが、女は嫉妬を抑えきれず暴走する。類は友を呼ぶの典型例。変態は変態を呼ぶのだ。業を分かち、癒し合ってるようで、この男に魅入られた女たちは地獄へまっしぐら。男の生い立ちに理由があるのだが、詐欺対象がことごとく熟女以上というのが、いやらしい。しかも生々しい描写はホラーの域(監督、ちゃっかり自分の奥さんだけは綺麗に撮って)。そして意外と教訓的な後味が残る話であった。
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