心が叫びたがってるんだ。(2017)の映画専門家レビュー一覧

心が叫びたがってるんだ。(2017)

2015年に公開された同名アニメ映画を実写化。幼い頃のトラウマから、順は喋ると腹痛に襲われるように。ミュージカル主役に立候補した順は、一緒に地域ふれあい交流会実行委員をする拓実に背中を押され、封じ込めていた思いを歌に乗せ伝えようとするが……。コミュニケーションに悩む高校生たちをクローズアップする青春群像劇。監督は「近キョリ恋愛」の熊澤尚人。他人に本音で向き合うことが苦手な坂上拓実をアイドルグループSexy Zoneの中島健人が、何気ない言葉で思わぬ事態を呼んだことが傷になっている成瀬順をNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』の芳根京子が演じるほか、「四月は君の嘘」の石井杏奈、俳優・佐藤浩市の長男である寛一郎らが出演。アニメ版の舞台となった埼玉県の秩父やロケーション協力した栃木県足利市などで撮影が行われた。
  • 映画評論家

    北川れい子

    そういえばテレビアニメの『3月のライオン』と実写映画2部作の「3月のライオン」は、原作に対する切り口の違いか、まったく別ものとしてどちらも楽しめたが、劇場版アニメが先行したこの実写映画の場合、どうも全体にナリとフリのバランスが悪く、小っ恥ずかしいったらない。高校生役の若手俳優たちが、小学生レベルの好きとか嫌いで右往左往して。「この世のもっとも大きな罪はことばで人を傷付けること」という台詞も実写だとカマトトめく。終盤のミュージカルも小学生レベル。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    大ヒットアニメの実写化ゆえの苦労もあったろうがこれは全然いいんじゃないでしょうか。ところで、発話が困難なひとでも歌は唄える、という同じネタを昔、時代劇映画で観たが、あれはなんだっけ。大川橋蔵主演の次郎長ものスピンオフ的映画で、どもりゆえにいっつもバカにされてる堺駿二が、お、俺ぁ、歌を唄うときにゃあどもらねえんでい! と言って自分の名乗りを堂々と朗々と唄いながら殴りこむも華を見せたのはそこまでで、斬り殺される。こういうのはなぜかとても感動的だ。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    大前提としてアニメ版との比較が不可避の本作。言葉を発さないヒロインを演じる芳根京子は、当然の如く台詞に頼らない演技を強いられるが、“本音を言わない”ことと“喋らない”こととの違いを表現してみせている。そしてカメラは、表情だけでなく内面も捉えようとしていることが窺える。例えば、心が寄り添うとカメラはゆっくりとズームインし、心が離れるとズームアウトする。また渡り廊下では、本心を打ち明けるタイミングで柱が画面から排除さるなど映像表現も重視されている。

1 - 3件表示/全3件