ハートストーンの映画専門家レビュー一覧

ハートストーン

第73回ヴェネチア国際映画祭最優秀LGBT映画賞ほか40以上の賞を受賞したアイスランド発の少年たちのラブストーリー。東アイスランドの漁村。幼なじみのソールとクリスティアンは思春期にさしかかり、ソールは大人びた美少女ベータに興味を抱き始める。監督・脚本は、本作が長編初監督となるグズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    仲のいい少年2人組が同性愛に気づいて狼狽する様子を、アイスランドの原始時代と変わらぬ風景の中に浮かび上がらせる。冒頭で少年グループが釣りをしている。無駄なほど大漁となるが、カサゴが釣れると“醜い姿だ”と口々に罵りながらカサゴに唾を吐き、グチャングチャンに踏みつぶす。この1シーンだけでこの村の同質的な閉塞性を明らかにしてしまう。未亡人や離婚者といった独身者にまで陳腐な貞節を強いる環境である。だからいっそう2人の少年の逸脱が輝いて見えるのだ。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    いつも一緒のチビとノッポの男子二人組。ノッポはチビが好きらしい。その彼のやるせない視線。ここに監督の繊細が匂って。チビくんの思春期のもだえ。姉たち、その現実主義とロマンティシズムの対称。そして母の孤独。演出の眼は行き届いている。それがアイスランドの広々とした空の下で描かれ、ゆえに息苦しさはない。だけど切なさはある。大人になること、それは自分とは違う他者への受容からはじまる、の結末に心が動く。巻頭に登場の醜い魚が巻末でぴりりと効いて。ちと長いのが。

  • 映画ライター

    中西愛子

    幼なじみの少年2人の繊細な心の距離と葛藤を描いた、アイスランドの青春映画。子どもの性を、きらきらした自然の中に溶け込ませていく映像の詩情は、スウェーデン時代のラッセ・ハルストレムを思い出したり。だが、後半、主人公の少年を想う友人の苦しみが押さえきれなくなる辺りから、純粋さと紙一重の絶望をえぐるようなドラマになっていく。ティーンの恋物語なのに、鑑賞後はディープな徒労感(ちょっと尺が長いのもあるけど)。1つの恋を終えた感じ。子役たちがすごくいい。

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