セザンヌと過ごした時間の映画専門家レビュー一覧
セザンヌと過ごした時間
ポスト印象派の巨匠セザンヌと『ナナ』、『居酒屋』の文豪ゾラの交流を美しい映像の中に綴ったドラマ。幼い頃から夢を語り合って来た2人は、成長してパリへ出る。作家として成功を収めたゾラに対して、画家に挑戦するセザンヌはなかなか芽が出ず……。出演は「世界にひとつの金メダル」のギョーム・カネ、「イヴ・サンローラン」のギョーム・ガリエンヌ。監督は「モンテーニュ通りのカフェ」のダニエル・トンプソン。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
ポール・セザンヌもエミール・ゾラも、個人的に大変関心のある人物なのだが、率直に言ってこの映画は、この二人を「俗情との結託」に矮小化した、悪しきドラマ化に陥っていると思う。『サント・ヴィクトワール山』の画家も『ナナ』の作家も、ひとりの人間だった、というのはもちろん当たり前に正しいが、そのような観点に立った時、決まっていかにもな紋切型に収まってしまう。実在の芸術家を描いた映画のほとんどが、この陥穽に嵌まっている。なぜならば、その方がウケるからだろう。
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映画系文筆業
奈々村久生
天才肌のエキセントリックな画家セザンヌと、友の才能を認めながらも現実的に手堅く成功を収めるゾラ。二人のギヨームの対照的な芝居合戦は見ごたえがある。ゾラの最期の謎に迫るべく二人の友情のドラマに大胆な仮説を立てた脚本も悪くない。人工的な芸術の都パリと明るくダイナミックな南仏のロケーションのコントラストが美しい。エンディングはちょっとやり過ぎな感も。あれをやるとその前に二時間近く二人を追ってきた本篇の粘り強さがかすんでしまいかねない。
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TVプロデューサー
山口剛
二人の芸術家セザンヌとエミール・ゾラの生涯にわたる交流が、陰鬱なパリと明るい南仏を背景に、時系列に沿って綿密に描かれる。かつてフランス映画の主流であった文芸映画の味わいを懐かしく思い出す。「肉体の悪魔」「赤と黒」「居酒屋」「青い麦」などなど。トリュフォーたちヌーヴェル・ヴァーグの論客に「古き伝統」として厳しい批判の対象となったた名画の数々だ。ヌーヴェル・ヴァーグに熱狂しながらもこれらの名画に酔ったその昔を思い出させてくれる映画だ。
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