オー・ルーシー!の映画専門家レビュー一覧

オー・ルーシー!

第70回カンヌ国際映画祭批評家週間で上映された新鋭・平柳敦子監督による寺島しのぶ主演作。満たされない日々を送る43歳独身OL節子。姪の美花の代理で英会話教室に通ううちに、アメリカ人講師に恋をしてしまい、彼を追いかけカリフォルニアへと旅立つが……。共演は「葛城事件」の南果歩、「キセキ あの日のソビト」の忽那汐里、「三度目の殺人」の役所広司、「パール・ハーバー」のジョシュ・ハートネット。エグゼクティブ・プロデューサーは「俺たちフィギュアスケーター」のウィル・フェレル、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のアダム・マッケイ。
  • 評論家

    上野昻志

    いいねぇ、寺島しのぶの仏頂面!職場で、仕事は一通りこなすが、周りから浮いている四十路の事務員という存在を見事に体現している。忽那汐里演じるちゃっかり娘の姪の企みで行く羽目になった怪しい英会話教室で、アメリカ人の教師から、いきなりハグされ、ルーシーと名付けられたことから、仏頂面の下に隠していた欲望を解放していく。先輩老嬢の退職祝いで盛り上がるパーティを一言で壊した彼女は、不仲な姉と共に姪が行ったアメリカへ向かうが……新人・平栁敦子監督に拍手!

  • 映画評論家

    上島春彦

    金髪のかつらで寺島がルーシーになっちゃう、という初期設定、つかみは悪くないものの、この陰惨な日本観察記録は評価できない。わざわざ描かれるくらいだから日本の会社組織はかくも下劣で、日本人女性はかくも度し難く軽はずみなのだろうが、だから何なんだ。監督はとても底の浅い絶望や希望を、米国旅行を餌にもてあそんでいる。ただしダメンズ君を演ずるジョシュは意外と良い。よく考えたら彼は米国に戻らず日本でちゃらんぽらんに暮らしていた方が幸せだったはずではないか。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    外国人監督が撮る日本と同じく、外から見た日本と日本人を描くことで、電車の遅延や雑居ビルといったありふれた光景が異国のものとして新鮮に映る。それだけに発端部で描かれた〈日本人と英会話〉がおざなりになったのが惜しい。役所も出てくるだけに社交ダンスの英会話学校版になりかねないが。寺島と南が渡米してから言語がほとんど問題にならないのでは、ドラマになる要素が素通りしてしまうのでつまらない。出演者たちが日本映画に出る時よりも伸び伸びと演じているのは良い。

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