ジュリーと恋と靴工場の映画専門家レビュー一覧
ジュリーと恋と靴工場
ジャック・ドゥミを彷彿とさせるカラフルでポップなミュージカル・コメディ。就職難を乗り越え、なんとか高級靴工場での試験採用を手にしたジュリー。ところが工場は、近代化の波を受けて閉鎖の危機に。同僚の女靴職人たちとこの危機に立ち向かうが……。出演は「EDEN/エデン」のポーリーヌ・エチエンヌ。監督のポール・カロリとコスティア・テスチュは、本作で長編デビュー。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
ゴダール「万事快調」をドゥミ的に撮り直そうという野心的なミュージカルコメディだ。高級靴ブランドの工場は靴職人たちのストライキで機能不全に陥っている。その破れかぶれな状況は、にがい祭りの様相を呈する。しかし輪の中に入りきれないヒロインの姿はもどかしく、非自覚的にスト破り的な反動に出たのに、工場長からは逆に最も過激な徒だと勘違いされる始末だ。かつて米国でさかんに西部劇の挽歌が作られたが、ここで詠嘆的に表されるのは何の挽歌なのか。熟練労働者だろうか。
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脚本家
北里宇一郎
万年バイト娘が正社員に採用され、その喜びが歌声になって。この嬉しい出だしで、これは大好物の映画になるぞと心が躍ったのだが。カラフルな鼻歌ミュージカル。踊りの方も、鼻歌感覚で、どこか頼りない。それも愛嬌かと見続けたのだが、しだいに単調に思える。やっぱ決めるとここは決めてほしい。ミュージカルなんだから。で、お話の方もだんだん尻つぼみ。結末はあれでいいの?どうもアイディアとセンスに、作り手の体がついていってない印象で。「パジャマゲーム」を見直すか。
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映画ライター
中西愛子
“正社員になりたい!”と切に願い、不況の時代に仕事を探す若い女性がやっと就くことができたのは、田舎の靴工場。だがそこは閉鎖寸前で、ベテラン女性職人たちがパリの本社に抗議すべく出向こうとしていた。働く女たちに焦点を当てた新感覚ミュージカルかと思いきや、いつしかセクシーな男性がヒロインの心を奪う物語に。中途半端に社会派の背景を出す必要あったのか? しかも価値観古臭い。それならいっそ、恋に恋するミュージカルとして純粋に楽しませて。音楽はよかったけど。
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