少女ファニーと運命の旅の映画専門家レビュー一覧
少女ファニーと運命の旅
自伝に基づくドラマ。1943年、ナチスドイツ支配下のフランス。13歳のユダヤ人少女ファニーは幼い二人の妹と共に協力者による児童施設に匿われていたが、ナチスの捜査が及び、子供たちは移動を余儀なくされる。しかしその途上、引率者とはぐれてしまう。監督は、「女の欲望に関する5章」のローラ・ドワイヨン。出演は、「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」のセシル・ドゥ・フランス。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
ジャック・ドワイヨンのお嬢さんが監督した、実話もの。子どもって、いついかなる時でも、どんなにハードな状況にあっても、ちょっとしたことでいきなり遊び出してしまうし、そうなればすぐに愉しくなってしまう、という感じがすごく良い。草っぱらを駆け下りるファニーたちの姿は、紛れもないアンハッピーの内にもハッピーは宿るという真理を教えてくれる。主演の女の子のいかにも賢そうな立ち居振る舞いが素晴らしい。全体として好感を持ったが、ラストは少し作り過ぎではないかと。
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映画系文筆業
奈々村久生
上半期で一番のダークホース。ナチスドイツものとしてのシナリオ、社会的なメッセージやテーマ性はもちろん、少年少女の青春ドラマ、ロードムービー、役者の演出などどの要素を取ってもパーフェクト。特に年齢差のある男女混合グループの描き方が実に上手く、友情や恋愛といった言葉ではくくれない人間同士のつながりの豊かさが響く。道中で子供たちを襲う数々の危険のスリリングな描写、映像表現の巧みさ、手紙の伏線は震えるほど。年長の少年にかけさせたメガネのチョイスが大正解。
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TVプロデューサー
山口剛
昨今多いナチス映画の一本だが、ほとんど子供たちだけの世界というのが特色だ。ファニーをはじめ子供たちの演技はなかなか良く、緊張の持続で最後まで引っ張るが、ルネ・クレマンの「禁じられた遊び」やルイ・マル「さよなら子供たち」などと比べると、大人の視点で巧みにまとめたという印象は免れ難い。子供の演技は監督の意図に忠実なのだろうが、もっと演技以前の自由な姿を丹念に拾った方が、個々の存在感が強く出ただろう。安心な一時、無邪気にはしゃぐ姿が印象深い。
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