ひかりのたびの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
きっとサンダー監督やスタッフ、キャストの方々は、撮影前に、設定やキャラクターをたっぷり咀嚼したのだと思う。でもでもゴメン、咀嚼のしすぎなのか、自分たちだけで分かっていてしかも妙にアタマでっかち。いや、分かり易い映画にしろというのではない。設定やキャラクターにほとんどリアリティが感じられないということ。人影もまばらな町。田舎町を荒す不動産屋。そんなシーン、あった? 台詞で言うだけ。モノクロ映像も必然性は感じられず、アート気取りのポーズに見える。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
地味だが面白い。高川裕也演じる、他人に憎まれることや悪さを仕事として引き受けている男がいるが、なんつうか彼はギリギリ人間らしさを残している。その理由が、ただ彼を見つめ、許してきた娘(志田彩良)がいたから、ということが良い。またそのことが、彼に踏み石にされた(と本人は認識しない)女性(山田真歩)との会話でわかるのも面白い。「エル・スール」のいろいろ抱えた父親は娘にただ不安げに見られていた間だけ庇護されていたのではないか。そんなことを思わされた。
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映画評論家
松崎健夫
偶然が導いた悪魔との取引。この映画はモノクロで撮影されているため、空さえも青くない。白と黒が生み出すグラデーションは、この世界が白黒をつけられない〈灰色〉であることを示唆しているようにも見える。本作の描く“土地の呪縛”は、田舎であればあるほど顕著なもの。何事においても選択肢が少なく、目の前にあるものの中からしか選択できず、そこから外れれば敵視されるという息苦しさの根源でもある。『カンブリア宮殿』のナレーションで耳馴染みある高川裕也の演技が出色。
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