blank13の映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
ギャンブル好きで借金に追われ、蒸発した父が、13年ぶりに消息が知れた時は、余命いくばくもない状態ですぐ亡くなる。そのわびしい葬儀の席で、子どもたちが知らなかった父親の意外な面が明らかになるという物語に格別の新味はない。ただ、家族のなかでは、子どものときにキャッチボールをした記憶があるため、父の病床を見舞う次男(高橋一生)が病院の屋上で父と言葉を交わす場面の二人の間の距離の取り方などに、監督(斎藤工)の映画をよく見てきたらしいセンスが現れている。
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映画評論家
上島春彦
撮影もいいし、前半(過去の経緯)と後半(葬儀の式次第)でスタイルをがらっと変える構成も面白い。ダメ親父の葬儀に現れるキャストも豪華。しかし作者の思い入れがかえって観客をシラけさせる結果に。こういう外ヅラばっかりいいヤツっているんだよ、としか言えないな。問題は「親がダメでも子は育つ」という真理にそれほどのドラマはない、という点にある。対比的に描かれるもう一つの立派な葬式の落ちのおかげで面白く見られたものの話自体はめちゃ薄くないですか、この映画。
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映画評論家
吉田伊知郎
下手な自主映画みたいな安っぽいエピソードと、つまらない台詞ばかりが耳に残るにもかかわらず、抜かりない撮影と旬の俳優が次々出てくるので見ていられる歪さを面白がれるかどうかで評価は別れる。斎藤・高橋・松岡の主役級のトリオを揃えてこれではモッタイナイとしか思えず。葬儀会場での転調は「生きる」の現代版にもなり得たが、演劇的小芝居を誇示し合うだけにしか見えず。俳優が監督するとありがちだが、演技を余すところなくすくい取って残そうとするので胃にもたれる。
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