真っ赤な星の映画専門家レビュー一覧

  • 映画評論家

    北川れい子

    96年生まれの脚本、監督と、95年生まれのプロデューサー。いずれも女性で、うわァ、まぶしいっ。でもハナシは背伸びをしすぎて、逆に幼稚。母親の愛人にレイプされた14歳の少女と、体を売っている27歳の元看護師。舞台は人がスカスカの地方の町。孤独が彼女たちの接着剤。それにしてもレイプとか売春とか、女性、いや人間にとっての大ごとをあえて題材にする若い作り手たちの、スタンドプレイ的な媚びがイヤラシい。当然出てくる男は全員ロクデナシ。ただ井樫監督、演出力はある。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    ニーナ・シモンやナタキンとは違う系統ながらやはり猫族的な顔貌の桜井ユキが良い。冒頭の純白看護師姿より二つ目の登場場面の暗がりでのフッカーな夏服とドスの効いた表情に惚れる。それと小松未来の純朴さの対照。ファーストカットの鮮やかさ、その距離感、色彩の透徹とそれを目にすることの快感が、本作全体に流れる高純度なものや絶対への憧れと一致。天文台が出てくるのもそれにつながる。地べたを這いずる生(性?)が彼女らに仰ぎ見ることをさせる。スジの通った女性映画。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    監督が常に、どのような視点で物事を見ているのかを窺わせるショットの連続。構図は隅々までが美しく、かつ的確で、それらは時に心象風景ともなっている。同じような境遇にある少女と女の関係は共依存にも似ているが、終盤で母性を逆転させている点が秀逸。「弥生ちゃんこそ、すぐに誰かのものになっちゃいそう」と呟く少女の未来には、絶望が待っている。法令遵守の類いに縛られる昨今、十代半ばの小松未来に静かなる激情を孕んだ少女を演じさせた井樫彩監督の未来は、末恐ろしい。

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